系統用蓄電池のノンファーム型接続とは!ファーム型接続 違いやメリット
系統用蓄電池事業を検討するにあたり、避けて通れない重要キーワードが「ノンファーム型接続」です。全国的に系統と呼ばれる送配電網の空き容量が枯渇するなか、系統の大型増強工事を待たずに早期連系を実現する制度として大きな注目を集めています。
しかし、「従来のファーム型接続との違いが分かりにくい」「無補償での出力制御が事業の収支設計にどれほど影響するのか不安だ」と疑問をお持ちの実務担当者様も少なくありません。
そこでこの記事では、ノンファーム型接続の仕組みやファーム型との違い、メリット・デメリット、出力制御リスクを織り込んだ収支シミュレーションから契約申込みや同意書の手続きまでまとめて紹介しますので、最後までご一読ください。
系統用蓄電池のノンファーム型接続とは何かをわかりやすく解説

はじめに、ノンファーム型接続の基本的な定義や、従来のファーム型接続との違いについて紹介します。
ノンファーム型接続の定義と系統用蓄電池における位置づけ
ノンファーム型接続とは、系統と呼ばれる電力会社の送配電網に空き容量がない、あるいは不足する状態であっても、一定の条件を受け入れることで系統への接続を認める柔軟な契約形態のことです。政府が進める「日本版コネクト&マネージ」の中核をなす制度として導入されました。
契約時に受け入れなければならない主な条件としては、系統の送電線が混雑した際に、一般送配電事業者(TSO)からの指令による出力制御に応じ、充放電の一時停止・抑制が無補償でおこなわれるといった内容です。
太陽光や風力などの再生可能エネルギーが急増した結果、全国の主要系統で空き容量ゼロとなるバックログ問題が深刻化しています。そうした状況下で、数年〜数十年かかる系統増強工事を待つことなく、系統用蓄電池を早期に連系させて事業化を進めるための必須スキームとして位置づけられています。
ノンファーム型接続とファーム型接続 違いの比較
従来の一般的な接続方式である「ファーム型接続」と「ノンファーム型接続」の決定的な違いは、連系容量の確実性と混雑時の扱いに加えて、制御時の補償の有無にあります。
下表で、両者の主要な違いを比較しながらまとめましたので、ご覧ください。
【表:ファーム型接続とノンファーム型接続の比較】
| 比較項目 | ファーム型接続(従来型) | ノンファーム型接続(新型) |
| 連系容量の保障 | 契約kWが常時保障される | 混雑時には送電が制限される |
| 系統空き容量の要件 | 空き容量が必要(増強工事が必要な場合あり) | 空き容量がゼロでも接続可能 |
| 系統混雑時の給電順位 | 優先的に送電可能 | ファーム型優先、ノンファームは抑制 |
| 出力制御時の金銭補償 | あり(原則補償される) | なし(無補償での制御を受け入れる) |
| 混雑時の制御順序 | なし | 降着した案件順に制御 |
表のとおり、もし混雑が発生した際、ファーム型電源の送電が優先され、ノンファーム型電源は新しく接続された降着案件から順番に出力制御が発動します。そのため、系統用蓄電池においては、ノンファーム接続独自の優先順位と無補償ルールを前提とした運用設計が必要です。
参照URL:
電力広域的運営推進機関「系統の接続および利用ルールについて」https://www.occto.or.jp/grid/business/setsuzoku.html
ScienceX ナレッジ「ノンファーム型接続と出力制御リスク— 蓄電池事業の収益にどう効くか」
https://www.scix.co.jp/column-nonfirm
ノンファーム型接続のメリット・デメリットと導入判断

ここでは、系統用蓄電池事業でノンファーム型接続を選択するメリットや、事前に確認すべきデメリット・リスクについて紹介します。
系統用蓄電池でノンファーム型接続を選択するメリット
系統用蓄電池の事業開発においてノンファーム型接続を採用する最大のメリットは、以下の3点が挙げられます。
1.早期連系が確保できる
系統の空き容量がゼロとされるエリアであっても、数年〜十数年におよぶ基幹系統の増強工事を待たずに、スピーディに接続承諾を得て事業を開始できます。
2.工事費負担金を大幅に削減できる
大規模な系統増強工事がないため、事業者側に請求される数億円規模の工事費負担金を大幅に回避・削減することが可能です。
3.充放電双方向で柔軟な活用ができる
蓄電池はシステムひとつで発電(電源としての放電側)だけでなく充電(系統から電力を引き出す需要家側)もおこなえるため、配電線の混雑状況に応じた柔軟なアグリゲーション制御と非常に相性が良いという特性を持っています。
このように、スピード感をもって案件化を進め、初期投資を抑えたい事業者にとって、ノンファーム型接続は非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。
事前に確認すべきデメリットと出力制御リスク
一方で、事業計画を立てるうえで無視できないデメリットやリスクもあります。以下で、順にポイント3つを見ていきましょう。
第一に、系統混雑時に無補償で出力制御が発動するため、本来予定していた放電(売電)や調整力供出ができず、売上高やNOI利回りが損なわれるダウンサイドリスクがある点です。
第二に、同じ系統の配電線や変電所に将来新たなノンファーム電源や蓄電池が追加接続された場合、混雑状態となる頻度が増加して出力制御の発生回数が増える可能性があるため、予見性の低さがネックとなります。
第三に、放電時(供給側)の制御だけでなく、系統の電圧上昇や混雑状況によっては充電側(需要側)の制御制約を受ける恐れもあり、充放電スキーム全体に制約がかかるリスクを織り込んでおく必要があります。
参照URL: とくとくマガジン:株式会社 和上ホールディングス「ノンファーム型接続についてわかりやすく解説!メリットやデメリットについても!」
https://wajo-holdings.jp/media/7403
日経BP メガソーラービジネス plus「『ノンファーム接続』接続検討が45GW、『系統用蓄電池』の適地情報公開へ」 https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/news/00001/02957/?ST=msb
ノンファーム型接続による出力制御が収支設計に与える影響

ここからは、ノンファーム型接続での出力制御が事業の収支設計に与える影響や、シミュレーションの試算例について見ていきましょう。
出力制御の発生頻度・タイミングと収支設計への織り込み方
ノンファーム型接続による出力制御は、日中に太陽光発電が一斉にピークを迎える時間帯や、特定送配電線の通過容量が上限に達して混雑するタイミングで集中的に発生します。
出力制御が発動すると、卸電力市場(JEPX)における高値で放電できる機会や、需給調整市場(EPRX)でのkWh電力量に関する対価が得られなくなります。ただし、需給調整市場のΔkW(待機容量対価)や容量市場(OCCTO)の供給力対価といった固定価格での売電収入については、契約形態や応答可能状態を維持していれば一定の収益を確保できるケースがあります。
したがって、アグリゲーターが保有する高度なAI-EMSを活用し、系統の混雑時間帯をあらかじめ予測して充放電スケジュールをシフトさせるなど、出力制御による収益悪化を最小化する運用設計が不可欠です。
標準ケース vs 最悪ケースでの収支設計シミュレーション試算
初期投資額を約6億円とし、定格出力2MW・定格容量8MWhモデルを例に、出力制御の発生頻度を変えたシナリオ3つを通して、年間収支シミュレーションを比較してみましょう。なお、ここで用いる「年5%」「年15%」という出力制御の発生率はあくまで一つの試算例であり、実際の発生率は接続する系統の混雑状況、地域、電源接続の順位(先着順位)によって大きく異なります。自社案件における実際の発生見込みは、OCCTOおよび各一般送配電事業者が公表している混雑実績・出力制御実績のデータを確認したうえで、個別に精査することを推奨します。
【表:2MW/8MWh案件における出力制御シナリオ別収支比較】
| シミュレーション項目 | 制御なし(基準) | 標準ケース(年5%で出力制御が発生) | 最悪ケース(年15%の高頻度で出力制御が発生) |
| 年間想定粗売上高 | 約10,000万円 | 約9,500万円 | 約8,500万円 |
| 年間OPEX(維持費) | 約1,800万円 | 約1,800万円 | 約1,800万円 |
| 年間手取り純収益 | 約8,200万円 | 約7,700万円 | 約6,700万円 |
| 事業実質利回り(IRR) | 約13.6% | 約12.8% | 約11.1% |
上表のように、最悪ケースとして年間15%におよぶ高頻度な出力制御が発生した場合でも、手取り純収益は6,700万円確保され、実質IRRは11%台を維持できるため、事業が破綻しない安全なレベルで判断可能です。ただし、これは本記事が設定した仮定シナリオに基づく試算であり、実際の出力制御頻度が「年15%」を上回るケースも起こり得ます。事業計画の策定にあたっては、接続予定エリアの過去の混雑実績や出力制御指令の発動実績を個別に確認し、より保守的なシナリオも併せて検討することをおすすめします。
参照URL:
ScienceX ナレッジ「ノンファーム型接続と出力制御リスク— 蓄電池事業の収益にどう効くか」
https://www.scix.co.jp/column-nonfirm
ENERGY ADVISOR「【電力制度チャンネル】第12回:ノンファーム電源の系統用蓄電池で需給調整市場に参入した場合、系統混雑時に何が起きるのか」
https://energy-advisor.jp/012_channel/
電力広域的運営推進機関(OCCTO)「系統混雑状況・出力制御実績等の関連情報」
https://www.occto.or.jp/
ノンファーム型接続の契約申込み手順と同意書の手続き

ここでは、ノンファーム型接続を一般送配電事業者へ申し込む手順や、提出する同意書の確認ポイントについて紹介します。
一般送配電事業者への契約申込みフローと必要書類
以下のとおり、ノンファーム型接続で系統連系を確実にするための実務フローには4つのステップがあります。
ステップ1:接続検討の申込み
一般送配電事業者へ接続検討を申し込み、系統の空き状況やノンファーム適用の可否、工事費負担金の概算回答を得ます。
ステップ2:土地権利の確定・証拠書類の準備
空押さえ対策のため、設置場所の土地売買契約書または賃貸借契約書による権利関係の証明資料の提出が求められます。
ステップ3:接続契約の申込み
発電量調整供給契約および需要側契約を同時に提出し、系統連系保証金をあらかじめ納付します。
ステップ4:工事費負担金契約・連系の承諾
送配電事業者から接続承諾と正式な工事費負担金回答を受領し、契約を締結します。
同意書の記載内容・確認事項と不備を防ぐチェックリスト
契約申込みの際、一般送配電事業者から指定様式である「ノンファーム型接続に関する同意書」の提出が求められます。
同意書には、以下の重要受容条項が記載されており、法的な同意が必須です。
・系統混雑時には一般送配電事業者の指令に従い無補償で出力制御を受け入れること
・制御の優先順位は後系接続(新しい案件)から順番に発動することを受容すること
・将来的に周辺で新しい電源が追加され混雑が増加しても、異議申し立てを行わないこと
申込む際は、手続きの手戻りを防ぐため、以下のチェックリストを事前に確認してください。
【ノンファーム型接続 申込み前の確認チェックリスト】
・設置土地の権原証明が確保できているか(売買・賃貸借契約書)
・系統連系保証金の資金手配が完了しているか
・同意書の受容条項について自社役員および投資家の合意が得られているか
・接続するPCSが遠隔出力制御インターフェースに対応しているか
・提携アグリゲーターがノンファーム制御指令に対応可能なEMSを保有しているか
上記の要件やチェックリストをひとつずつクリアすることで、スムーズな接続契約の締結と安定したプロジェクト推進が可能となります。
参照URL: 電力広域的運営推進機関「系統の接続および利用ルールについて」 https://www.occto.or.jp/grid/business/setsuzoku.html
とくとくマガジン:株式会社 和上ホールディングス「ノンファーム型接続についてわかりやすく解説!メリットやデメリットについても!」
https://wajo-holdings.jp/media/7403
ノンファーム型接続を前提とした系統用蓄電池の事業設計とリスクヘッジ
最後に、ノンファーム型接続の出力制御リスクを抑え、収益を最大化するための事業設計とパートナー選びのポイントを紹介します。
出力制御リスクを最小化する立地選定とアグリゲーション運用
ノンファーム型接続であっても、事前の工夫によって出力制御リスクを大幅に抑制することが可能です。
立地選定においては、電力広域的運営推進機関(OCCTO)や各電力会社が公表している「混雑マップ」に加え、過去の通過容量データを分析し、上位系統・基幹系統の混雑頻度が低い変電所近接エリアからノード(節点)を優先的に選びます。
運用面においては、充放電によるkWh売電収益(JEPX)だけに依存せず、需給調整市場のΔkW(待機容量対価)や容量市場の供給力対価といった、出力制御の影響を受けにくい固定型の売電収入比率を高める収益ポートフォリオを構築することがおすすめです。また、単一の系統に集中させず、複数の変電所エリアへ小口分散配置するポートフォリオ型開発を軸とするアプローチもリスクヘッジとなります。
系統用蓄電池の導入を成功させる事業パートナーの選定基準
ノンファーム型接続での事業化を成功させるためには、信頼できる専門パートナーの選定が欠かせません。
アグリゲーターを選ぶにあたっては、手数料がただ安価だからだけでなく、一般送配電事業者からのリアルタイムなノンファーム制御指令や系統混雑予測に対応できる高度なAI-EMSを運用しているかも大切な判断基準です。また、PCSやBMSを供給するメーカーにおいても、高速レスポンス制御や遠隔インターフェースへの適合実績をしっかりと確認しましょう。
用地選定から系統接続協議、リスクを織り込んだシミュレーション、アグリゲーションまでを一貫して代行・提案できる専門プラットフォームを活用することが、不確実性の高いノンファーム接続案件を成功へ導く確実なアプローチとなります。
参照URL: ENERGY ADVISOR「【電力制度チャンネル】第12回:ノンファーム電源の系統用蓄電池で需給調整市場に参入した場合、系統混雑時に何が起きるのか」
https://energy-advisor.jp/012_channel/
ScienceX ナレッジ「ノンファーム型接続と出力制御リスク — 蓄電池事業の収益にどう効くか」
https://www.scix.co.jp/column-nonfirm
まとめ:系統用蓄電池のノンファーム型接続を正しく理解して事業を成功させよう
系統用蓄電池事業において、ノンファーム型接続は系統の空き容量がゼロのエリアであっても早期連系と事業化を可能にする重要な制度です。無補償での出力制御リスクや将来の混雑増加といったデメリットを受け入れなければならないものの、標準から最悪なケースまでのシナリオを織り込んだ精緻な収支設計をおこなうことで、十分に高い収益性と安全性を両立させることができます。
その際、契約申込みや同意書の手続きを着実に進め、混雑リスクの低い適地の選定と高度なAI-EMSを持つアグリゲーターとの連携することが成功の大きな鍵です。
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