長期脱炭素電源オークションとは!仕組みや要件と容量市場との違い


公開日:2026.09.28 更新日:2026.10.05
長期脱炭素電源オークションとは!仕組みや要件と容量市場との違い

2050年カーボンニュートラルの実現に向け、新規の脱炭素電源開発を促す長期脱炭素電源オークションへの注目が急速に高まっています。原則20年間の固定費回収が保証されるため、事業開発や投資判断を進める上で極めて重要な制度です。

しかし、長期脱炭素電源オークションとはどのような仕組みなのか、従来の容量市場との違いや対象となる電源要件、参入メリット・デメリットまで正確に把握できているでしょうか?

そこでこの記事では、制度概要から対象要件、落札後の収益構造や具体的な参加方法までわかりやすく紹介します 。自社の事業計画や投資検討に役立つ情報にも触れていますので、最後までご一読ください。

1. 長期脱炭素電源オークションとは?制度概要と容量市場との違いをわかりやすく解説

はじめに、長期脱炭素電源オークションの基本、制度創設の背景、固定費回収の仕組み、既存の容量市場との決定的な違いについて紹介します。

1-1. 長期脱炭素電源オークションとは?制度の背景と2050年の目的

長期脱炭素電源オークション(LTDA:Long-Term Decarbonization Power Source Auction)とは、2050年カーボンニュートラルの達成に向け、脱炭素電源の新規建設や大規模リプレースを促進する目的で創設された制度です。

従来の卸電力市場(JEPX)中心の取引構造では、将来の市場価格の変動やマーチャントリスクとしての予見不可能性が大きな壁となり、初期投資(CapEx)の大きな脱炭素電源への新規投資が進みにくい課題が存在していました。こうした投資課題を解決し、脱炭素電源の投資予見性を確保するために本オークションが導入されました。

1-2. 巨額の初期投資回収を可能にする原則20年間の固定費回収の仕組み

本制度の最大の特徴は、オークションで落札した電源に対し、原則20年間にわたって固定費相当額(容量確保契約金額)の支払いが保証される点です。

本制度により、発電事業者は長期にわたり安定したキャッシュフローを見込むことが可能となります。支払い原資は、小売電気事業者や一般送配電事業者が負担する容量拠出金から充当されます。長期固定の収入が担保されるため、金融機関からのノンリコースローンをはじめとするプロジェクトファイナンスの調達が容易となり、融資適格性であるバンカビリティが大幅に向上することも企業側のメリットです。

1-3. 容量市場と長期脱炭素電源オークションの違い

既存の容量市場(メインオークション)と長期脱炭素電源オークションは、目的や対象電源、契約期間において大きく異なります。

下表で、両者の違いをまとめましたので、ご覧ください。

【容量市場と長期脱炭素電源オークションの違い】

項目容量市場(メインオークション)長期脱炭素電源オークション
主な目的4年後の日本全体の必要な供給力(kW)の確保巨額投資を要する脱炭素電源の新設・リプレース誘導
対象電源既設電源を含む幅広い既存電源脱炭素電源の新設・リプレース・脱炭素改修
契約期間単年度(1年間)原則20年間
約定方式シングルプライス方式マルチプライス方式(Pay-as-Bid)

このように、既存電源の維持を主目的とする容量市場に対し、将来の脱炭素インフラを新設・更新するための長期枠組みが長期脱炭素電源オークションです。

参照URL: 電力広域的運営推進機関(OCCTO)「長期脱炭素電源オークションを知ろう!」
https://www.occto.or.jp/capacity-market/decarbonation_know/

丸紅新電力「長期脱炭素電源オークションとは?仕組みやメリット、容量市場との違いを徹底解説」
https://denki.marubeni.co.jp/column/decarbonation/

2. 対象電源と参加資格・クリアすべき要件

ここでは、オークションに応札できる対象電源区分、設備・技術上の必須要件、自社が対象か判定するためのチェックリストについて紹介します。

2-1. 長期脱炭素電源オークションの対象となる電源区分

本オークションの対象となる電源は、二酸化炭素の排出削減に直接寄与する電源および調整力アセットです。

具体的区分として、太陽光・陸上風力・洋上風力などの再生可能エネルギー(新設・リプレース)や、1日1回以上3時間以上の継続運転が可能な系統用大規模蓄電池(BESS)が代表例です。さらに、揚水式水力、調整式・貯水式・流込式水力、地熱、バイオマス発電も含まれます。また、水素専焼・10%以上混焼、アンモニア混焼、バイオマス専焼改修、CCS付き火力、既設原発の安全対策投資なども対象です。

なお、過渡的な特例措置として2023〜2025年度に応札する脱炭素化ロードマップを備えたLNG専焼火力も限定的に認められています。

2-2. 応札者がクリアすべき技術的・手続的要件

応札に参加するためには、電源計画が単なる構想にとどまらず、実現確度の高いプロジェクトであることを証明する必要があります。

土地要件としては、事業用地の所有権取得または賃貸借合意などの権利確保が求められます。系統接続要件として、一般送配電事業者との系統接続検討が進行しており、アクセス枠の確保が必要です。環境影響評価としてアセスメント手続きの着手はもちろん、蓄電池4年以内、再エネ・火力等7〜10年以内といった電源種別ごとに定められた供給力提供開始期限の遵守も求められます。

2-3. 自社事業が対象か判断する対象要件確認チェックリスト

事業参入の可否を判断する際は、以下の7つの要件を事前に確認しましょう。

①電気事業法上の発電事業者またはアグリゲーターであるか

②新設・リプレースまたは脱炭素改修を行う運転開始前の電源計画か

③募集要綱に定める最低応札容量(蓄電池10MW等)を満たしているか

④土地権利証明および系統接続の回答・契約見通しが立っているか

⑤FIT・FIP制度など国の他制度と重複適用していないか

⑥指定された供給力提供開始期限までに確実に稼働できるか

⑦応札上限価格(キャップ)以下の現実的な原価積算ができているか

参照URL: 電力広域的運営推進機関(OCCTO)「長期脱炭素電源オークション」 https://www.occto.or.jp/capacity-market/longterm_decarbonization/

PEAKS MEDIA「長期脱炭素電源オークションとは|要件やオークションへの参加メリットなどをわかりやすく解説」 https://www.peaks-media.com/6185/

3. 事業者が押さえるべき参入メリットとデメリット・リスク

ここからは、事業者が長期脱炭素電源オークションに参入することで得られるメリットと、事前に把握しておくべきデメリットやリスク管理について見ていきましょう。

3-1. 参入メリットの確認

事業者が長期脱炭素電源オークションへ参入するメリットは、安定した収益性とファイナンスの容易化にあります。

20年間にわたり固定費相当の容量収入が確約されるため、電力市場の価格暴落時にも収益基盤が揺らぎません。そのため、長期確約収入を担保とすることで、メガバンク等からの大規模なノンリコースローン調達がスムーズになります。また、国の厳格な選考を通過した先進的な脱炭素電源として、対外的な社会的信用やESG評価を大きく高めることが可能です。

3-2. 注意すべきデメリットとリスク

参入にあたっては、収益上限ルールやペナルティ制度などのデメリットを事前に正しく理解する必要があります。

最大の注意点は、JEPXや需給調整市場など他市場で得た利益に対する9割還付規律(クローバック)です。市場で可変費を超える超過利益を得た場合、その約9割を国の指定機関へ返還または控除しなければならないため、アップサイド収益には上限が設けられます。

また、工事の遅延で供給力提供開始期限に遅れた場合や、約束した出力(kW)を供給できなかった場合には、厳しい違約金やペナルティが発生します。さらに、建設リードタイム中の資材高騰や金利上昇リスクも織り込む必要があります。

3-3. 容量市場や需給調整市場単独運用との収益構造・リスクの対比

投資戦略を立てる上では、本オークション活用とマーチャント運用(単独運用)の比較が有効です。

【収益構造やリスクの対比表】

運用モデル収益構造の特性リスクレベル期待できる収益性
長期脱炭素電源オークション20年固定費保証 + 超過利益1割残し極めて低い長期安定・着実な利回り
マーチャント単独運用JEPXアービトラージ + 需給調整市場高い(市場連動)高いアップサイドの可能性

上表からもわかるように、ローリスクでの長期安定回収を目指す場合は長期脱炭素電源オークションの活用が適しています。

参照URL: エネマネX「長期脱炭素電源オークションとは?わかりやすく解説」 https://enemanex.jp/what-decarbonization-capacity-auction/

丸紅新電力「長期脱炭素電源オークションとは?仕組みやメリット、容量市場との違いを徹底解説」
https://denki.marubeni.co.jp/column/decarbonation/

4. 応札・落札の仕組みと収益化の流れ

ここでは、オークションでの落札価格決定の仕組み、落札後の金銭清算ロジック、および系統用蓄電池を例にした収益試算について紹介します。

4-1. マルチプライス方式による入札と落札価格決定の仕組み

長期脱炭素電源オークションでは、入札方式としてマルチプライス方式が採用されています。

これは、一律の約定価格で精算される方式とは異なり、事業者が自ら提出した応札価格そのものが容量確保契約単価として落札価格になるルールです。募集容量に達するまで、全電源種横断で応札価格の低い案件から順に落札されます。不当な高値入札や不適切な原価上乗せを防ぐため、事前に原価算定資料の審査とキャップといわれる上限価格が設定される点が特徴です。

4-2. 落札後の収益モデル

落札後の金銭清算は、固定収入と市場収益の還付計算を組み合わせた数理モデルによって行われます。

以下で、事業者受取収入の基本的なイメージを紹介します。

○事業者受取収入=容量確保契約金額+実市場収益−可変費−還付金額

還付金額は、実市場収益から可変費を差し引いた控除後利益の90%と設定されています。残る10%の利益は事業者の手元に残るため、市場取引を効率化して収益を伸ばす健全なインセンティブが機能する設計です。

4-3. 系統用蓄電池プロジェクトにおける収益試算の考え方と数理モデル

ここでは、10MW/40MWh規模の系統用蓄電池(BESS)を本オークションに応札して落札した場合の収益シミュレーションを考案します。

初期投資(CapEx)として機器調達・工事費・系統連系費がかかるものの、落札によって20年間の固定単価(円/kW/年)に基づく容量収入が保証されます。これに卸電力市場での昼充電・夜放電によるアービトラージや需給調整市場の運用収益を重ね合わせ、その1割のインセンティブを上乗せします。結果として、長期的なキャッシュフローの不確実性が排除され、プロジェクト全体の内部収益率(IRR)を安定的に確定させることが可能です。

参照URL: 経済産業省「長期脱炭素電源オークションについて」 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/stable_power_supply_wg/pdf/002_04_00.pdf

HATCH「長期脱炭素電源オークションとは?制度概要と参入のメリット」 https://shizen-hatch.net/2025/12/08/ltda/

5. 事前準備から契約締結までの参加方法と申請手続きフロー

ここでは、電力広域的運営推進機関(OCCTO)への申請手順、具体的な参加方法、準備スケジュールについて紹介します。

5-1. OCCTOへの参加登録から応札・審査・落札・契約締結までの全体参加方法フロー

長期脱炭素電源オークションへの参加は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)の専用システムを通じて進められます 。

・ステップ1(事業者登録・事前手続き)

容量市場システムへのログイン情報取得と事業者情報の登録をする。

ステップ2(電源等情報の登録・事前審査)

事業計画書、燃料調達計画、脱炭素化ロードマップ等を提出する。

ステップ3(期待容量登録・資格通知)

審査合格後の参加資格通知書を受領する。

ステップ4(応札・入札実施)

容量および応札価格のシステムを送信する。

ステップ5(落札・契約締結)

約定結果公表と容量確保契約締結後、運転開始となります。

各ステップを滞りなく進めることが重要です。

5-2. 事前審査・応札に必要な準備書類と実施スケジュールの目安

申請にあたっては、証明書類の精度と提出スケジュールの管理が不可欠です。

主な準備書類には、事業計画書、原価算定根拠資料、誓約書、系統接続検討回答書、土地権利証明書、アセス関連書類などがあります。バイオマス電源では燃料調達計画、火力等では脱炭素化ロードマップの添削・提出が必要です。

募集要綱公表から事業者登録、事前審査、応札、落札決定までは数ヶ月から半年程度のタイムラインで進行するため、事前の準備が鍵を握ります。

5-3. 手続き遅延や不採択を防ぐための申請前チェックリスト

書類の不備による不採択や手続き遅延を防ぐため、申請前に以下の7項目を確認しましょう。

①原価算定根拠が最新のガイドライン・指定フォーマットに準拠しているか

②一般送配電事業者から系統接続検討の承諾回答を取得しているか

③事業用地の権利関係・賃貸借契約が適切に成立しているか

④供給力提供開始期限の遅延ペナルティを織り込んだ実行可能な工期計画か

⑤容量市場システム(OCCTOシステム)のアクセス認証を取得しているか

⑥インフレや金利変動リスクを織り込んだ最安応札価格の試算が完了しているか

⑦JC-STARなどのセキュリティ要件に機器が適合しているか

参照URL: 電力広域的運営推進機関(OCCTO)「長期脱炭素電源オークションの制度詳細について(応札年度:2025年度)」 https://www.occto.or.jp/market-board/market/files/202509_youryou_syousaisetsumei_long.pdf

CARBONIX MEDIA「長期脱炭素電源オークションとは?メリット・デメリット、今後の展望を解説」
https://sustech-inc.co.jp/carbonix/media/ltda/

6. まとめ:長期脱炭素電源オークションとは最新動向を捉えて系統用蓄電池事業を成功させるポイント

ここまで、長期脱炭素電源オークションの概要や容量市場との違い、対象要件、参入メリット・デメリット、および系統用蓄電池事業への活用ポイントについて紹介しました。

長期脱炭素電源オークションは、原則20年間の固定費回収を保証し、大規模な脱炭素電源投資を実現する国家的な重要制度です。制度要件やクローバック規律を正しく理解し、綿密な事業計画を立てることが成功のポイントとなります。

特に、再エネの出力制御問題を解決する系統用蓄電池事業は、本オークションとの親和性が極めて高く、安定した投資回収と高い収益性を目指す企業にとって絶好の参入機会です。

自社条件での参入可能性や土地選定、系統接続、収益シミュレーションを進める第一歩として、系統用蓄電池総合プラットフォーム「GRID NAVI( https://gridnavi.jp/ )」の活用をおすすめします。

泉 拓磨
泉 拓磨 本記事の執筆・監修者

合同会社スタートツアーズ 代表社員

太陽光発電・蓄電池をはじめとするエネルギー分野の専門家。NTTスマイルエナジーに約10年間勤務し、営業から新サービスの開発・企画まで幅広く従事。独立後は、メーカー・商社・EPC・地域新電力など、エネルギー関連企業のコンサルティングや人材育成を手がけ、現在は18社の顧問を務める。

自治体の災害時避難所への太陽光発電・産業用蓄電池の導入や、地域新電力における電源開発などの実務経験も持つ。太陽光・蓄電池の設計から事業開発、人材育成まで、エネルギー業界で培った豊富な知見をもとに記事を監修。

太陽光発電・蓄電池をはじめとするエネルギー分野の専門家。NTTスマイルエナジーに約10年間勤務し、営業から新サービスの開発・企画まで幅広く従事。独立後は、メーカー・商社・EPC・地域新電力など、エネルギー関連企業のコンサルティングや人材育成を手がけ、現在は18社の顧問を務める。

自治体の災害時避難所への太陽光発電・産業用蓄電池の導入や、地域新電力における電源開発などの実務経験も持つ。太陽光・蓄電池の設計から事業開発、人材育成まで、エネルギー業界で培った豊富な知見をもとに記事を監修。

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