系統用蓄電池とは|発電所との違い、仕組みから補助金まで解説


公開日:2026.06.07 更新日:2026.05.26
系統用蓄電池とは|発電所との違い、仕組みから補助金まで解説

再生可能エネルギーの導入が進むなか「系統用蓄電池」という言葉を目にする機会が増えています。発電所とは何が違うのか、どのようなビジネスモデルなのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

系統用蓄電池とは、送配電網に接続して電気を「ためて、必要なときに届ける」大型蓄電池のことです。国の補助金も年間350億円規模に達するなど、エネルギー分野の新たなビジネス領域として急速に関心が高まっています。

この記事では、系統用蓄電池の仕組みや従来の発電所との違い、収益モデル、補助金制度、参入前に押さえておきたい注意点までをわかりやすく解説します。事業検討の第一歩として、まずは全体像をつかんでいきましょう。

目次

系統用蓄電池とは何か|発電所との違いと役割

系統用蓄電池とは、送配電網に接続して充放電を行う大型の蓄電池のことです。

系統用蓄電池の「系統」とは

「系統」とは、発電所でつくった電気を家庭や企業に届けるための送電線・配電線のネットワークのことで「電力系統」とも呼ばれます。系統用蓄電池はこの送配電ネットワークに直接つながり、電気の充電や放電を行います。

自宅の太陽光パネルと組み合わせて使う家庭用蓄電池とは異なり、電力インフラの一部として送配電網そのものに接続する点が大きな特徴です。

従来の発電所との違い

従来の発電所は、火力・原子力・太陽光などの燃料やエネルギー源を使って電気を「つくる」専門の設備です。一方、系統用蓄電池は電気をつくるのではなく、系統を通じて電気を「ためて、必要なときに放出する」設備となります。この違いから系統用蓄電池は「蓄電所」と呼ばれることもあります。

蓄電所には大きく2つのタイプがあります。太陽光発電所などに併設して余った電気をためる「併設型」と、蓄電池だけを単独で設置する「単独設置型」です。2022年12月の電気事業法改正による規制緩和により、蓄電池単独でも送電線を通じて系統に放電できるようになり、単独設置型での事業参入が本格的に広がり始めました。

系統用蓄電池が必要とされる背景

系統用蓄電池の需要が急速に高まっている背景には、再生可能エネルギーの普及による電力需給バランスの不均衡があります。

再エネ普及が引き起こす「出力制御」問題

太陽光発電や風力発電は、天候や時間帯によって発電量が大きく変動します。晴天の昼間に太陽光の発電量が急増すると、電力の供給が需要を上回り送配電網に過度な負担がかかります。大規模停電を防ぐため、発電所の発電量を抑制する措置が「出力制御」です。出力制御が実施されると、本来であれば発電できたはずの再エネ電力がそのまま使われずに失われてしまいます。

出力制御は全国的に拡大しており、特に太陽光発電の導入量が多い九州エリアでは深刻な状況となっています。2023年度の九州エリアにおける再エネの出力制御量は約12.9億kWhに達し、出力制御率は8.3%と過去最高を記録しました。これは約32万世帯分の年間電力消費量に匹敵する規模です。

せっかくつくった再エネの電気が使われずに捨てられている状況は、経済的にも社会的にも大きな損失です。

系統用蓄電池は電力の需給バランスを保つ

電力の安定供給には「つくる量」と「使う量」を常に一致させる必要があります。しかし再エネの発電量は天候次第で変動するため、この原則を保つことが難しいのが現状です。

ここで重要な役割を果たすのが系統用蓄電池です。電気が余っている時間帯に充電し、足りなくなる時間帯に放電することで需給のバランスを調整します。再エネの電気を無駄にせず有効活用できる社会インフラとして、系統用蓄電池への期待は年々高まっています。

蓄電所の仕組みと主要設備「蓄電池」「PCS」「EMS」の役割

蓄電所は蓄電池本体に加え、電気の変換装置や制御システムなど複数の設備が連携して稼働します。ここでは、中核となる3つの設備について解説します。

蓄電池:電気エネルギーを貯蔵

蓄電所の心臓部にあたるのが蓄電池本体です。現在、系統用蓄電池ではリチウムイオン電池が主流となっています。リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、充放電が速いことから電力市場での取引に適しています。電気を化学エネルギーに変換しておき、必要に応じて再び電気エネルギーとして取り出す仕組みです。

パワーコンディショナ(PCS):直流と交流を効率よく変換

蓄電池にためられる電気は直流(DC)ですが、送配電網を流れる電気は交流(AC)です。この変換を担うのがパワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System)です。充電時には交流を直流に変え、放電時には直流を交流に変換して系統まで送り出します。変換効率が蓄電所全体の収益性に直結するため、高効率なPCSの選定が重要です。

エネルギー管理システム(EMS):最適な充放電を制御

エネルギー管理システム(EMS:Energy Management System)は「いつ充電し、いつ放電するか」を判断・制御するシステムです。電力市場の価格データや気象予測、需給状況をリアルタイムで分析し、収益が最大化されるように充放電のタイミングを最適化します。いわば蓄電所の「頭脳」にあたる設備であり、運用の巧拙がそのまま事業収益を左右します。

系統用蓄電池事業|3つの電力市場と収益モデル

系統用蓄電池事業の大きな特徴は、複数の電力市場から収益を得られる点にあります。ここでは、主要な3つの市場と、それぞれの収益の仕組みを解説します。

卸電力市場(JEPX):電力を安く買って高く売る

卸電力市場(JEPX)は、電力の売買が行われる取引市場です。系統用蓄電池事業者は、電力価格が安い時間帯(深夜や日中の再エネ余剰時など)に充電し、価格が高い時間帯(夕方のピーク時間など)に放電・売電します。この価格差で利益を得る手法は「アービトラージ(裁定取引)」と呼ばれ、系統用蓄電池の最も基本的な収益源です。

たとえば、深夜に1kWhあたり10円で充電し、夕方に20円で売電すれば、1kWhあたり10円の差益が生まれます。ただし市場価格は日々変動するため、価格差が縮小するリスクもある点は理解しておく必要があります。

需給調整市場:電力の需給バランスを調整する役割として報酬を得る。 需給調整市場は、電力の需給バランスをリアルタイムで調整するための「調整力」を売買する市場です。

系統を管理する一般送配電事業者は、秒単位で変わる電力需要に対し即座に対応できる調整力を確保しておく必要があります。系統用蓄電池は応答速度が非常に速く、特に数秒以内の応答が求められる一次調整力において高い適性を持ちます。 数秒単位での出力調整も可能です。この特性が調整力の提供に適しています。

実際の需給調整市場への参加は、複数の電源を束ねて運用する事業者「アグリゲーター」を通じて行うのが一般的です。

容量市場:電力供給能力を担保して報酬を得る

容量市場は将来の電力供給力(kW)を確保するための市場です。電力の「量(kWh)」ではなく「供給できる能力(kW)」を取引する点が特徴です。

なかでも注目されているのが「長期脱炭素電源オークション」です。この制度では、蓄電池を含む脱炭素電源の新設を対象に入札が行われ、落札した事業者は原則20年間にわたって固定費水準の容量収入を受け取ることができます。長期的な収入の見通しが立つため、金融機関からの資金調達もしやすくなります。

このように、卸電力市場・需給調整市場・容量市場を組み合わせて複数の収益源を確保することが、系統用蓄電池事業の基本戦略です。1つの市場に依存せず収益源を分散できることが、蓄電事業の大きな特徴です。

10MW以上の設備で「発電事業者」登録する意義とは

2022年の電気事業法改正により、出力10MW(1万kW)以上の蓄電池を設置する事業者は「発電事業者」として登録する義務が生じることとなりました。これに伴い、保安規程の策定や主任技術者の選任など、発電所と同等の規制・届出義務が課せられます。

事業者にとっての負担は増えますが、発電事業者として登録することには大きなメリットもあります。容量市場や長期脱炭素電源オークションへの参加資格が得られるため、20年間に及ぶ固定収入を確保する道が開けます。

10MW未満の場合は発電事業者としての届出義務はなく、参入のハードルは相対的に低くなります。ただし、容量市場へのアクセスが限定される分、収益ポテンシャルも小さくなる面があります。

出力規模の選択にあたり、初期投資額や系統接続の条件、接続検討の待機期間なども考慮する必要があります。2025年6月末時点で接続検討の申し込みは約1億4,300万kWに達しており、エリアによっては検討から接続契約まで長期間を要するケースも報告されています。事業規模の設計は、これらの条件を踏まえた総合的な判断が求められます。

【2026年最新】国による系統用蓄電池導入支援補助金

系統用蓄電池を対象とした国の補助金制度は、2021年度から毎年公募が行われています。正式名称は「再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金」で、経済産業省が所管し、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が執行団体を務めています。

令和7年度(2025年度)の当初予算は約150億円(国庫債務負担行為を含めると総額約400億円)で、実際の採択額は過去最大の約363億円、採択件数も37件と過去最多を記録しました。さらに令和7年度補正予算では、系統用蓄電池に加えて再エネ併設蓄電池や需要家側蓄電池、長期エネルギー貯蔵技術(LDES)にまで対象を拡大した新事業が創設されるなど、支援の規模と範囲は年々広がっています。令和8年度(2026年度)予算にも350億円が計上されており、今後も継続的な支援が見込まれます。

補助率は蓄電池の種類に応じて設定されており、標準的なリチウムイオン系統用蓄電池は1/2以内、長時間蓄電システム(LDES:6時間以上の貯蔵かつリチウムイオン電池以外)は2/3以内となっています。補助上限額や出力規模による細区分については、最新の公募要領を確認してください。 

補助対象経費には蓄電池本体やPCS、EMSなどの設備費に加え、設計費や工事費も含まれます。初期投資の負担を大幅に軽減できるため、事業の採算性を高めるうえで重要な制度です。なお、補助金は毎年度の予算編成で内容が変わる可能性があるため、最新の公募要領を確認する必要があります。

系統用蓄電池事業の参入前に知っておくべき注意点

系統用蓄電池事業には大きな成長ポテンシャルがありますが、参入にあたっては事前に理解しておくべきリスクや課題も存在します。

系統接続の条件と注意点

系統用蓄電池を送配電網に接続するには、一般送配電事業者への「接続検討」の申請が必要です。しかし近年は申し込みが急増しており、2025年6月末時点の接続検討受付量は約1億4,300万kW(14,300万kW)に達しています。実際に連系済みの蓄電池は約25万kWにとどまるため、検討段階の案件と実稼働の差は非常に大きい状況です。

この急増に伴い、2026年1月からは接続検討申込み時に土地の調査結果や登記簿等の提出が義務化され、契約申込み段階では土地の使用権原を証する書類の提出が必須となりました。事実上、事業用地を確保してからでないと手続きが進められない体制へと変わっています。

エリアによっては検討から契約まで長期間を要するケースもあり、事業計画のスケジュールに大きく影響します。また、系統接続には負担金が発生しますが、接続地点の系統状況によっては当初の想定を大幅に上回ることもあります。早期に申請を進めることが、事業化のスピードを左右する重要なポイントです。

土地選定・用地確保のハードル

蓄電所の建設用地には、さまざまな条件が求められます。豪雪地帯やハザードマップ上の浸水想定区域、住宅密集地は避ける必要があり、候補地が限定されがちです。さらに、系統への接続可否や負担金は立地条件に大きく左右されます。送電線からの距離が離れるほど、送電線の敷設や維持管理費用が膨らむためです。

用地の確保から接続条件の確認、地権者との交渉まで、専門的な知識が求められます。自社だけで判断するのはリスクが大きく、土地・系統・法規制に精通した専門家との連携が重要になります。

「アグリゲーター」選定が系統用蓄電池事業の収益を左右

系統用蓄電池の運用では、どのアグリゲーターと組むかが収益を大きく左右します。アグリゲーターとは、複数の蓄電池や分散型電源を束ねて電力市場に参加する事業者であり、充放電のタイミングや市場への入札戦略を担います。

蓄電所は24時間365日の稼働が前提となるため、監視・保守体制の構築も不可欠です。加えて、電力市場の制度は頻繁に変更されるため、制度変化への継続的な対応力もアグリゲーターに求められます。設備を導入するだけでなく、運用まで含めた体制設計が事業の成否を決めるのです。

まとめ:系統用蓄電池事業参入前に仕組みを正しく理解することがポイント

系統用蓄電池事業は、再エネの導入拡大と電力市場の整備を背景に大きな成長が見込まれる分野です。本記事のポイントを整理すると次のとおりです。

  • 系統用蓄電池は、送配電網に直接接続して電気を「ためて放出する」設備であり従来の発電所とは役割が異なる
  • 卸電力市場・需給調整市場・容量市場の3つを組み合わせた収益モデルが基本
  • 国の補助金制度(年間350億円規模)により初期投資の負担を軽減できる
  • 系統接続の待機期間や土地選定、アグリゲーター選定など、参入前に検討すべき課題が多い
  • 制度変更が頻繁に行われるため、最新情報のキャッチアップが欠かせない

成長市場であると同時に、系統接続・用地確保・市場運用と高い専門性が求められる事業でもあります。事業成功のためには、土地の選定から系統接続、運用体制の構築までを一気通貫で相談できるパートナーの存在が重要です。まずは事業の全体像を正しく理解し、知識の土台を固めることが第一歩ではないでしょうか。

参照

脇坂 祐輔
脇坂 祐輔 本記事の執筆・監修者

系統用蓄電池メディア「GRID NAVI」事業責任者

国内金融機関およびベンチャー企業にて、営業・事業企画領域に従事。 現在は、再生可能エネルギー分野を中心に、事業推進・情報発信に携わる。

国内金融機関およびベンチャー企業にて、営業・事業企画領域に従事。 現在は、再生可能エネルギー分野を中心に、事業推進・情報発信に携わる。