一括償却資産とは:少額減価償却資産との違いや仕訳を徹底解説


公開日:2026.08.11 更新日:2026.08.07
一括償却資産とは:少額減価償却資産との違いや仕訳を徹底解説

ビジネスで使うパソコンやオフィス家具などを購入したとき、経理処理の方法や節税の選択肢で頭を悩ませることはありませんか。10万円以上の物品は固定資産になりますが、金額によって選べる特例が異なり、判断を誤ると損をしてしまう恐れがあります。

なかでも10万円以上20万円未満の資産を取得したときに、すべての事業者が一律で活用できる頼もしい味方が一括償却資産です。面倒な月割計算をせずに3年間で均等に費用化できる制度であるうえに、地方税である償却資産税をゼロに抑えるメリットもあります。

そこでこの記事では、自社のキャッシュフローを最大化する税務判断で必要な一括償却資産の基礎知識から少額減価償却資産の特例との違い、実務で今すぐ使える具体的な仕訳パターンまで、まとめて紹介します。

1. 一括償却資産とは?対象となる資産の条件と制度の基本

はじめに、固定資産を購入した際の一括償却資産とは何か、基本的な情報と対象となる資産の条件について紹介します。

1-1. 減価償却の原則と取得価額による資産区分のルール

一括償却資産とは、取得価額が10万円以上20万円未満の資産を、本来の耐用年数にかかわらず3年間で均等に減価償却できる制度です。

業務で使用するPCや机などの固定資産を購入したとき、1年以上使用して時間の経過とともに価値が減少するものは減価償却資産に該当します。

下表で、取得価額の基準によって分類した税務上の処理方法を見ていきましょう。

取得価額の基準主な処理方法概要
10万円未満即時経費化
(消耗品費等)
購入した事業年度に全額を経費処理
10万円以上20万円未満一括償却資産3年間で均等に分けて費用化
10万円以上40万円未満少額減価償却資産の特例中小企業等に限り即時償却が可能(青色申告限定)

たとえば、パソコンであれば4年、事務用机であれば8年というように、資産が本来持っている法定耐用年数は細かく定められており、物品ごとに調査するのは手間がかかります。そのうえ、上表の通りに処理すると、少額な資産でも台帳に個別登録したり、毎年、複雑な計算が必要になり、経理の事務負担が重くなってしまいます。

そこで、少額な資産を対象に、企業の会計や税務処理の事務負担を大幅に軽減し、手続きを簡素化するために設けられた特例措置が一括償却資産制度です。

1-2. 特例適用の10万円以上20万円未満の判定基準

一括償却資産の特例を適用するためには、購入した減価償却資産の取得価額が1単位あたり10万円以上20万円未満の範囲内にあることが必須条件です。

ちなみに、本制度は、大企業から中小企業まで、資本金などの規模に関係なくすべての法人が実務レベルで選択し、利用できます。そのうえ、確定申告の種類も問われないため、青色申告だけでなく、白色申告の個人事業主やフリーランスの方でも広く活用できる点が大きな特徴です。

取得価額の判定は通常1単位で数えるルールになっています。通常は製品1台、備品1点といったイメージですが、応接セットなどのように1組(1セット)でカウントするケースもあります。

たとえば、1点あたり18万円のPCを複数台まとめて購入した場合、合計額が20万円を超えていても、1単位が20万円未満なら一括償却資産として処理可能です。ただし、令和4年度の税制改正により、主要な事業を除き、他者への貸付けの用に供した資産は、特例の対象から除外されたため注意してください。ただし、例外として、節税目的ではなく、法人リースなど「主要な事業として行われる貸付」は従来通り適用されます。

参照URL:
・マネーフォワード クラウド「一括償却資産と少額減価償却資産の違いは?判定基準や節税効果などを解説」
・freee「一括償却資産とは?償却資産税との違いや節税メリット・仕訳を解説」
・BtoBプラットフォーム請求書「【2026年最新】一括償却資産とは?少額減価償却資産との違いや仕訳方法を解説」
・辻・本郷 税理士法人「少額資産特例の令和4年度改正について ~貸付に用いた資産の除外」

2. 一括償却資産の会計処理と3年間で均等に償却する仕組み

ここでは、一括償却資産の具体的な会計処理の流れと、3年間で均等に経費化していく仕組みについて紹介します。

2-1. 法定耐用年数を無視して一律償却できるメリット

一括償却資産を選択すると、資産ごとに定められた法定耐用年数に関係なく、一律3年間で均等に減価償却として会計処理できます。

通常の減価償却では、PCは4年、金属製の机は15年のように、購入した固定資産の種類や構造に応じて細かく耐用年数を調べて計算しなければなりません。しかし、一括償却資産を適用すると、主に以下のメリットが生まれます。

  • 法定耐用年数を調べる労力が省けること
  • 面倒な月割計算をせずに1年分の経費を計上できること
  • 地方税である償却資産税の課税対象外になること

一括償却資産であれば、どのような資産でも、使用を始めた事業年度から3年間にわたって取得価額の合計額の3分の1ずつを毎年自動的に必要経費へ算入できます。また、通常の減価償却資産を期中に取得したときのような、事業に使用した日から期末までの月数に応じて按分する月割計算が一切不要になります。そのため、事業年度が12ヶ月の法人の場合、期首に購入しても、決算月の末日に駆け込みで購入しても、当期に丸ごと1年分の金額を経費として計上可能です。結果として、耐用年数を調べる手間暇が省けるだけでなく、期末が迫った投資であっても当期の費用を前倒しして確実に計上できるメリットがあります。

2-2. 決算時の必要経費への計上方法と償却資産税の扱い

決算においては、その事業年度中に一括償却を選択したすべての資産の取得価額の合計額をベースにして、3分の1の金額を正しい手順で経費へ計上します。

具体的な計上方法としては、購入時に一度資産計上し、決算のたびに3分の1ずつを減価償却費に振り替えていく決算調整方式がシンプルでわかりやすくおすすめです。一括償却資産は、3年間の均等償却が終わった4年目以降に資産価値がちょうど0円となり、通常の減価償却のように帳簿上に備忘価額1円を残す必要もありません。

さらに、一括償却資産を選ぶ最大のメリットとして、市区町村に申告・納税する地方税の償却資産税の課税対象から除外される点が挙げられます。通常、10万円以上の器具備品などは毎年1月1日の保有状況を申告する義務がありますが、一括償却したものは対象外となるため、毎年の税負担をゼロに抑えられます。

このように、一括償却資産とは、固定資産税の負担だけでなく、書類の作成にかかる事務コストもまとめて削減できるため、広く企業で積極的に導入されている会計処理の方法です。

参照URL:
・全力経理部「別表16(8)とは?国税OBが0から書き方まで記載例を使って解説」
・税理士法人掛川総合会計事務所「一括償却資産の償却・除却の際の計算処理」
・群馬県明和町「償却資産の申告について

3. 一括償却資産と少額減価償却資産の特例との違いを比較

ここからは、名前がよく似ている一括償却資産と少額減価償却資産の特例との違いを比較しながら見ていきましょう。

3-1. 取得価額の上限や青色申告要件など各制度との違い

少額減価償却資産の特例とは、青色申告を行う中小企業者などに限って、取得価額が40万円未満の資産を購入した事業年度に全額を即時償却できる制度です。

本特例を利用できるのは、常時使用する従業員数が400人以下の法人や個人事業主などに限定されています。

一方で、一括償却資産は、確定申告が青色申告であるか白色申告であるかを問わず、すべての事業者が一律に活用できる点に大きな違いがあります。

また、少額減価償却資産の特例には、1年間で利用できる合計金額の上限は年間300万円までです。対して、一括償却資産にはこうした年間の合計限度額が一切設定されていないため、20万円未満の資産をたくさん購入する年度でも枠を気にせず適用することができます。

このように、会社の規模やその年の投資額によって、どちらの制度を適用すべきかが大きく変わってきます。

3-2. 自社の状況に合わせた会計処理を選ぶ比較表

それでは、一括償却資産と少額減価償却資産の特例のどちらを選ぶべきでしょうか。

実際の会計処理では、当期の利益水準や地方税への影響をふまえて慎重に検討する必要があります。

下の比較表で、自社の条件に合わせた会計処理をひと目で選べるポイントを整理しました。

【一括償却資産と少額減価償却資産の特例の比較表】

比較項目一括償却資産少額減価償却資産の特例
対象となる金額10万円以上20万円未満10万円以上40万円未満
費用化のタイミング3年間で均等に償却取得した年度に全額を即時償却
対象となる事業者すべての法人・個人事業主青色申告を行う中小企業者等
年間の合計上限額なし(制限なし)年間300万円まで
償却資産税(地方税)完全に非課税(対象外)課税対象となる(申告が必要)


上表のとおり、購入年度にまとめて大きな経費を作りたいときは少額減価償却資産の特例が向いています。ただし、特例を使った資産は地方税である償却資産税の課税対象になるため、毎年1月の申告実務や税負担が発生するデメリットがあります。

目先の節税だけでなく、翌期以降のランニングコストや事務負担まで含めて、どちらが本当に有利かを判断しましょう。

参照URL:
・弥生株式会社「【2026最新】最大40万に!少額減価償却資産の特例と仕訳例|改正対応」
・マネーフォワード クラウド「少額減価償却資産とは?特例の対象も解説【令和8年度税制改正】」
・キヤノンITソリューションズ「一括償却資産とは?少額減価償却資産との違いやメリット・デメリット、仕訳方法などを徹底解説」

4. 一括償却資産の処理で具体的な仕訳パターンと注意点

ここでは、一括償却資産を帳簿に記録する際によくある仕訳パターンと、会計処理で知っておきたい注意点について紹介します。

4-1. 購入時と決算時に分ける基本的な仕訳の記入例

一括償却資産を会計処理する場合、購入時に一度資産勘定で計上し、決算で3分の1ずつ費用に振り替える決算調整方式が分かりやすいため、実務でおすすめです。

たとえば、1台15万円のPCを3台、合計45万円を現金で購入したときの具体的な仕訳は以下のようになります。

  • 購入時の仕訳(資産として計上するとき)

(借方)一括償却資産 450,000円 / (貸方)現金預金 450,000円

  • 毎期の決算時の仕訳(1年目から3年目の期末にそれぞれ実施)

(借方)減価償却費 150,000円 / (貸方)一括償却資産 150,000円

上記のような決算調整方式であれば、会計帳簿の費用と税務上の損金算入額が常に一致するため、確定申告時の面倒な別表調整の手間がかかりません。

なお、購入時に全額を消耗品費などの経費で一発で処理してしまい、税務申告のときに法人税申告書で加算や減算をおこなう申告調整方式というやり方もあります。しかし、申告調整方式は帳簿上はシンプルになるものの、3年間にわたって複雑な別表管理が必要になるため、よほどの理由がない限りは決算調整方式をおすすめします。

4-2. 3年の途中で資産を廃棄・売却した場合の注意点

一括償却資産は、個々の固定資産を個別に管理せず、その年度に取得したものをつなげてひとまとめのグループとして処理する仕組みになっています。

そのため、3年の償却期間の途中でPCが故障して廃棄(除却)したり、他社へ売却したりした場合でも、通常の固定資産のような除却損を計上することはできません。たとえ現物が手元からなくなったとしても、当初の予定通り3年間で均等に、3分の1ずつの減価償却を最後まで機械的に続けなければならないという税務上のルールに注意しましょう。

もし途中で売却して代金を受け取ったときは、その売却金額のすべてを「雑収入」や「固定資産売却益」としてその期の利益に計上します。現物が消えたからといって、帳簿から一気に残高を落とすミスを放置しておくと、税務調査で指摘されやすいため、くれぐれも注意が必要です。

参照URL:
・有馬公認会計士・税理士事務所「一括償却資産を償却終了前に売却・除却した場合の会計処理」
・TOKIUM「一括償却資産の除却仕訳は?償却中・3年経過後の違いと注意点」
・マネーフォワード クラウド「一括償却資産を除却した場合の仕訳は?償却期間中・償却後の具体例を解説」

5. どちらが得か?一括償却資産を上手に活用した自社の節税戦略

ここからは、一括償却資産の仕組みを上手に使って、自社のキャッシュフローを最大化するための節税戦略を見ていきましょう。

5-1. 今期の黒字額や利益水準に合わせた償却方法の使い分け

今期の業績が大幅な黒字になりそうで、できるだけ多くの経費を作って目の前の法人税や所得税を抑えたいときは、購入した年度に一発で全額を費用化できる少額減価償却資産の特例を選ぶほうが有利です。

しかし、企業の税務戦略においては、単にその年に多く費用を落とせばすべてが良い結果になるとは限りません。あえて今期の利益をしっかりと残し、銀行融資や新規取引の際の審査で必要となる信用度のために格付けを高く維持したいケースもあります。このようなときこそ、費用負担を3年間に分散させて各期の黒字幅を確保できる、一括償却資産で処理する方法がぴったりです。 

さらに、少額特例とは異なり地方税の負担をゼロに抑えられるメリットもあるため、自社の利益水準や資金計画のバランスを考えながら、上手に使い分けるアプローチが重要になります。

5-2. 税込経理と税抜経理の選び方による取得価額判定への影響

一括償却資産や少額特例を活用するうえで、見落としてはならないのが、税込経理または税抜経理といった消費税の経理方式による影響です。

10万円以上20万円未満という一括償却の選択基準は、税抜経理方式の事業者であれば消費税を抜いた本体価格を基準にして判定されます。一方で、税込経理方式を採用している企業や消費税の免税事業者の場合は、消費税を含んだ総額を基準にして判定しなければなりません。

ここでは、本体価格19万8,000円、消費税(10%)込みで21万7,800円のオフィス備品を1点購入したケースを例に考えてみましょう。

(1)税抜経理方式

判定される取得価額:19万8,000円

判定ポイント:20万円未満のため一括償却資産として処理できる

(2)税込経理方式

判定される取得価額:21万7,800円

判定ポイント:20万円以上となるため一括償却資産の対象外となる

このように、まったく同じ金額の製品を購入した場合であっても、税抜経理を採用している企業のほうが一括償却資産の適用範囲が広くなり、課税所得のコントロールにおいて有利に働きます。期末の間際に駆け込みで設備投資を行う前には、判定のミスを防ぐためにも、自社の消費税の処理基準を必ず確認しておきましょう。

参照URL:
・弥生株式会社「【2026最新】最大40万に!少額減価償却資産の特例と仕訳例|改正対応」
・キヤノンITソリューションズ「一括償却資産とは?少額減価償却資産との違いやメリット・デメリット、仕訳方法などを徹底解説」
・ベリーベスト税理士事務所「一括償却資産と少額減価償却資産に関する知っておきたい節税方法2選!」

6. まとめ:一括償却資産とは何かを理解して最適な税務判断を

一括償却資産は、10万円以上20万円未満の固定資産を3年間で均等に費用化できる事業者を選ばない制度です。本来の法定耐用年数や面倒な月割計算を無視して処理できるため、経理の事務負担をまとめて軽減できます。

そのうえ、地方税である償却資産税が非課税となるため、長期的なランニングコストの削減にもつながる会計処理の方法です。大幅な黒字を相殺したいときは少額特例、融資の格付けを維持したいときは一括償却の活用がおすすめです。

まずは、実際の個別条件や自社にぴったりな活用方法を踏まえて、前向きな検討を詳しく進めてみてはいかがでしょうか。

井上 勝司
井上 勝司 本記事の執筆・監修者

株式会社インターコンテック所属 マネージングディレクター / 事業戦略責任者

太陽光発電システムの企画・開発・流通・販売まで、再生可能エネルギー事業の上流から下流までを一貫して経験する事業戦略責任者。再生可能エネルギー業界で18年以上にわたり、太陽光発電事業を中心に、事業開発、EPC、プロジェクトマネジメント、金融ストラクチャリングなど幅広い分野に携わる。

Non-FIT制度開始以降は、大規模発電所から分散型・地産地消型電源の開発まで数多くのプロジェクトを推進し、スタンフォード大学発の太陽光パネルメーカーやEPC事業者で培った知見を活かして事業開発を実施。RE100を推進する企業への案件組成や、自社での発電設備保有・電力卸取引など、多様な事業スキームを手掛けてきた。近年は系統用蓄電池やNon-FIT電源開発にも注力し、事業戦略の立案から実行までを支援している。

慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(経営学修士〈Executive MBA〉)。経営学・都市社会学を専門とし、役員歴4年、再生可能エネルギー業界歴18年以上。

太陽光発電システムの企画・開発・流通・販売まで、再生可能エネルギー事業の上流から下流までを一貫して経験する事業戦略責任者。再生可能エネルギー業界で18年以上にわたり、太陽光発電事業を中心に、事業開発、EPC、プロジェクトマネジメント、金融ストラクチャリングなど幅広い分野に携わる。

Non-FIT制度開始以降は、大規模発電所から分散型・地産地消型電源の開発まで数多くのプロジェクトを推進し、スタンフォード大学発の太陽光パネルメーカーやEPC事業者で培った知見を活かして事業開発を実施。RE100を推進する企業への案件組成や、自社での発電設備保有・電力卸取引など、多様な事業スキームを手掛けてきた。近年は系統用蓄電池やNon-FIT電源開発にも注力し、事業戦略の立案から実行までを支援している。

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