FIP制度とは!再エネ売電の仕組みとFITとの違いを解説
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、日本のエネルギー産業は大きな転換期を迎えています。これまで再生可能エネルギー(再エネ)の普及をリードしてきたのは固定価格買取制度(FIT)でした。しかし、現在、市場競争を促しながら再エネの自立化を加速させるため、新たな仕組みであるFIP制度への移行が進められています。
そこでこの記事では、FIP制度の基本概念からFIT制度との明確な違い、収益構造やメリット・リスクについて、2026年最新の市場動向を踏まえつつ紹介しますので、最後までご一読ください。
目次
FIP制度とは?再エネの主力電源化に向けた新しい仕組み

まず、FIP制度とは何か、基本知識を紹介します。
フィードインプレミアム(FIP)の基本概念と目的
FIP制度とは、再エネで発電した電力を卸電力市場などで売電した際、その市場価格に対して国が一定の補助額(プレミアム)を上乗せする仕組みです。
発電事業者の投資に対するモチベーションを維持しつつ、再エネを補助金に依存しない自立した電源として電力市場へ統合していくことが本制度の根幹にある目的です。従来のFIT制度のように固定価格買取による市場から隔離された環境で守るのではなく、需要と供給に応じた市場取引へ参加させることで、再エネを規律ある主力電源へと進化させるステップとして機能します。
FIP制度が導入された背景と電力システムの変革
本制度の導入背景には、国民が負担する再エネ促進賦課金の増大を抑制し、実際の電力需要に馴染んだ発電を促進するという目的があります。
従来のFIT制度では、市場価格に関わらず定額での買い取りが保証されていたため、電力供給が過剰な時間帯でも発電が継続され、需給の歪みを生む一因となっていました。また、買い取り費用の原資となる再エネ賦課金の単価は変動しており、2024年度は3.49円/kWhと高水準で推移しています。国はこうした課題を解決するため、市場競争の原理を導入して電力システム全体の運営コストを低減させる変革としてFIP制度をスタートしました。
参照:
経済産業省「再生可能エネルギーの FIT制度・FIP制度における 2026年度以降の調達価格等と 2026年度の賦課金単価を設定します」
https://www.meti.go.jp/press/2025/03/20260319004/20260319004.html
資源エネルギー庁「再生可能エネルギー FIT・FIP制度ガイドブック 2026」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/data/kaitori/2026_fit_fip_guidebook.pdf
従来の制度と何が変わる?FIP制度とFITとの違い

では、従来のFIT制度と新しいFIP制度にはどのような違いがあるのでしょうか。
固定価格買取から市場連動型への移行
FIT制度とFIP制度の最大の違いは、売電価格が一定の「固定価格」か、市場環境に応じて変動する「市場連動型」かという点です。
FIT制度は国が定めた単価で長期間の買い取りが完全に保証されるため、事業者は収支予測を非常に立てやすいという特徴がありました。これに対してFIP制度は、卸電力市場(JEPX)での取引価格にプレミアムを上乗せして売電収入を得る仕組みです。そのため、電力の需給バランスに応じて売電単価が常に変動する市場連動型の運用体制へとシフトします。
売電価格やルールの違いを比較しながら整理
2つの制度の具体的な違いは、売電単価の決定方式だけでなく、インバランス負担の有無や環境価値の取引方法など複雑です。
【比較表】FIT制度とFIP制度
| ポイント | FIT制度(固定価格買取) | FIP制度(フィードインプレミアム) |
| 売電価格の決定 | 国が定めた価格で長期間固定 | 電力市場価格に連動して毎月変動 |
| インバランス負担 | 原則なし(インバランス特例で免責) | 発電事業者が自己負担(ペナルティ発生) |
| 非化石価値の取引 | 固定価格に含まれるため単独取引不可 | 非化石証書として切り出して需要家と直接取引可能 |
| 出力制御時の交付金 | 出力制御中も定額(一部ルール除く) | 出力制御時間帯はプレミアム付与なし |
インバランス特例が免責されていたFIT制度とは異なり、FIP制度では発電計画と実績の乖離であるインバランスに対する調整コストを自社で負う必要があります。また、環境価値である非化石証書を証書市場を通じて需要家と直接取引できるなど、新たな取引ルールが適用されます。
参照:
関西電力「太陽光発電のEPC事業とは?メリットやデメリット、最適なEPC業者を選ぶ際の注意点とポイントを解説」
https://sol.kepco.jp/useful/taiyoko/w/taiyoko_epc_merit/
資源エネルギー庁「再生可能エネルギー FIT・FIP制度ガイドブック 2026」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/data/kaitori/2026_fit_fip_guidebook.pdf
FIP制度の収益構造とプレミアムが上乗せされる仕組み

FIP制度の収益構造について、プレミアムが上乗せされる仕組みを見ていきましょう。
基準価格(FIP価格)と電力市場価格の関係性
FIP制度の収益は、あらかじめ国が設定した固定の基準価格(FIP価格)と、市場の動きに応じて変動する参照価格のバランスによって成り立ちます。
基準価格とは、再エネ設備を効率的に運営したときに必要となる費用をベースに算定される単価であり、交付期間中にわたって固定されます。一方の参照価格は、市場取引によって発電事業者が得られると期待される平均的な収入分を指します。この参照価格が市場の電力価格に連動して1ヶ月単位で見直されるため、収益のベースが形成されるのです。
毎月のプレミアム(補助額)が上乗せされる計算方法
毎月の発電事業者に交付される補助額であるプレミアムの総額は、算出されたプレミアム単価に実際の売電電力量を掛け合わせることで自動的に計算できます。
具体的なプレミアム単価の試算式は、以下の通りです。
▼プレミアム単価の試算式
プレミアム単価 = 基準価格(FIP価格) - 参照価格
参照価格は電力市場の平均価格を基礎に毎月算出されるため、市場価格が下がると参照価格も下がり、結果としてプレミアム単価は大きくなります。逆に市場価格が上がるとプレミアム単価は小さくなります。この月ごとの補正によって、基準価格(FIP価格)と期待収入の差分がプレミアムとして確実に上乗せされます。
発電事業者が負う「インバランスリスク(計画値同時同量)」の注意点
FIP制度では、事前に提出した30分単位の発電計画値と実際の発電実績値を一致させる運用ルールが必須です。インバランスリスクと呼ばれており、計画値同時同量の遵守が義務付けられます。
天候予測が外れた場合など、計画と実績の間に乖離(インバランス)が生じた場合、事業者はペナルティとしての調整コストを自己負担しなければなりません。こうしたインバランスによる運用リスクを和らげるため、経過措置としてプレミアムの一部に「バランシングコスト」が上乗せされて交付されます。開始当初の1.0円/kWhから年度を追うたびに段階的に低減されていくスケジュールが決定されており、今後、予測精度を高める運用がどこまで可能かどうかが実務上の大きな課題となっています。
参照:
ヤンマー「FIPとは?FIT制度との違いを解説」https://www.yanmar.com/jp/energy/knowledge/energy_issues/case_25.html
経済産業省「FIP制度について」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fip_2020/fip_document02.pdf
発電事業者が知っておくべきFIP制度のメリットとリスク

ここからは発電事業者が知っておくべきFIP制度のメリットとリスクを紹介します。
メリット:市場価格高騰時に売電収益を最大化できる
FIP制度を導入する最大のメリットは、電力需要が高まり市場価格が高騰する時間帯を狙って売電を行うことで、従来のFIT制度を大きく超える高い収益を手にできる点です。
固定価格で一律に買い取られるFIT制度とは異なり、FIP制度では高く売れた市場収入がそのまま事業者の利益となります。さらに、新設FIP電源や一定の条件を満たした移行電源では、VPPAなど非FIT非化石証書を活用した需要家との環境価値の直接取引が認められており、売電収入とは別枠の新たな現金収入源を生み出せるビジネスチャンスがあります。
デメリット:収益予測の難しさと市場価格変動リスク
一方で、本制度最大のデメリットかつリスクとなるのは、売電単価が常に市場のボラティリティ(価格変動率)に左右されるため、中長期の収益予測を立てることが構造的に難しい点です。
特に太陽光発電が集中する日中の時間帯は、エリア全体の供給過剰によって市場価格が0.01円/kWhまで下落するケースが頻発しています。実際に、九州エリアをはじめ全国で本格化している再エネの出力制御(出力抑制)の対象となった時間帯は、市場での売電機会を失うだけでなく、国からのプレミアムも一切付与されなくなるため、大きな収益の機会損失に直結する点に注意が必要です。
どちらの制度が有利かの判断基準
自社プロジェクトにおいてFIT制度とFIP制度のどちらを選択すべきかは、事業の所有規模と、市場リスクに対処できる運用体制の有無によって明確に分かれます。
専任の電気管理技術者がおらず、日々の需給管理に割くリソースがない小規模案件や、安定した固定収益を最優先に投資回収を設計したい場合はFIT制度が向いています。一方、一定以上の事業規模があり、専門の気象予測システムやアグリゲーターと連携できる体制を整え、市場の価格変動を活かして利回りを引き上げたい場合はFIP制度が圧倒的に有利となります。
参照:
アスエネ「FITからFIPへ|注目されるアグリゲーター企業とは?」
https://asuene.com/media/304/
和上ホールディングス「FIP制度におけるアグリゲーターの役割」
https://eco.wajo-holdings.jp/media/534
蓄電池の組み合わせによる売電最適化戦略
では、売電最適化戦略のなかでも、蓄電池の組み合わせによるアプローチを紹介します。
市場価格が低い時間帯に蓄電し、高い時間帯に供給する
FIP制度における市場変動リスクを完全にコントロールし、収益を最大化するための最も実効性のある対応策は、大型の蓄電池を併設する戦略です。
昼間の出力制御が発生するような市場価格が底値(0.01円/kWhなど)に張り付く時間帯に、太陽光で発電した余剰電力を自社の蓄電池にすべて充電します。そして、電力需要が急増して市場価格が最高値に跳ね上がる夕方から夜間のピーク時間帯に合わせて放電・売電を行います。この「アービトラージ(差益取引)」を徹底することで、出力制御による損失を完全に回避しつつ、市場価値とプレミアム価値を同時に獲得して収益性を最大化できます。
注目が集まる「系統用蓄電池事業」の収益化のリアルと成長性
再エネの主力電源化にともない、発電所に併設するモデルだけでなく、独立したインフラとして大型蓄電池を電力網に直接接続する系統用蓄電池事業が急成長する巨大市場として注目を集めています。
系統用蓄電池ビジネスの収益源は、スポット市場でのアービトラージ取引(裁定取引)だけに留まりません。JEPXでの卸電力取引に加え、需給調整市場では周波数調整力(ΔkW)を提供することでΔkW料金と調整電力量料金を得られるほか、供給力を提供する義務を果たすことを条件に、固定費水準の容量収入を原則20年間にわたり確保できる、長期脱炭素電源オークションといった容量市場など、レベニュースタッキングと呼ばれる複数の市場を組み合わせるマルチ収益モデルが強固な事業基盤を構築するための現実的なアプローチとなっています。
土地確保から電力接続、初期投資、運用体制までプロに相談すべき理由
しかしながら、系統用蓄電池事業への参入やFIP運用の実務においては、電力会社との複雑な送電網への接続検討や、都市計画法上の開発許可、建築基準法などの膨大な法規制をクリアしなければなりません。
特に、2026年からは国を挙げて架空申請による送電網の空押さえを徹底して排除する方向へ動き出しており、接続検討申込時に土地の調査結果・登記簿等の提出が義務化され、契約申込段階では土地の使用権原を証する書類の提出が必須となったため、参入ハードルがより厳格化しました。
さらに、5分・15分周期で激しく激変する電力市場での自動入札や24時間体制のAI充放電制御、JC-STARに準拠した高度なサイバーセキュリティ対策やO&M(運用・保守管理)体制の構築など、一貫して専門性の高いすべての論点を自社のみ単独のインハウス工数で判断・推進するのは非常に困難です。
確実な事業採算性(ROI)を見極め、初期投資の費用対効果を最適化するためには、実績のある専門のアグリゲーターや事業パートナーに初期段階から相談し、個別条件を踏まえた事業プランの構築を進めることがプロジェクト完遂への最短ルートとなります。
参照:
エネがえる「2026年最新 系統用蓄電池事業の経済性評価シミュレーション完全版──市場ミックス、制度変更、接続費用まで織り込む実務ガイド」
https://www.enegaeru.com/utility-scale-battery-economics-japan-2026
蓄電所ネット「アグリゲーター事業の仕組み:リソース集約による市場参加」
https://bess-net.jp/explainer/aggregator-business
まとめ:FIP制度の特性を正しく理解し蓄電池活用で次世代の再エネ事業へ
FIP制度への移行は、これまでのような国に固定価格で買い取ってもらう再エネ事業から、自立した電源として電力市場と調和していく次世代のエネルギー事業への劇的な転換点です。市場連動による価格変動リスクやインバランス責任という新たなデメリットや課題を抱える一方で、蓄電池を賢く組み合わせることで、FIT制度を大きく上回る収益力を獲得できる大きなポテンシャルを秘めています。
2026年現在のエネルギー市場は、低圧リソースの市場開放や土地確保ルールの厳格化、出力制御の優先順位変更など、制度変更が目まぐるしい状況にあります。こうした成長市場において自社の保有資産や土地の個別条件を活かし、不確実性を最小限に抑えた強固な事業スキームを構築するためにも、まずは豊富な知見を持つ専門のプロフェッショナルへ相談し、自社に最適な事業プランの第一歩を踏み出しましょう。