脱炭素とは。カーボンニュートラルの違いや企業の取り組みを簡単に解説
「脱炭素」や「カーボンニュートラル」は、企業経営に欠かせないテーマとなっています。一方で、違いや具体的な取り組みを正確に説明できない担当者も少なくありません。本記事では、脱炭素の基礎知識から企業の取り組み事例、再エネや系統用蓄電池の最新動向までをわかりやすく解説します。
目次
脱炭素とは何か?基礎知識をわかりやすく解説
まずは、脱炭素という言葉が持つ本来の意味と、これが世界中で急激に重視されるようになった背景について解説します。
脱炭素の定義と求められる背景

「脱炭素(脱炭素社会)」とは、化石燃料への依存を減らし、温室効果ガス、とくにCO2排出量を大幅に削減していく社会的な取り組みを指します。
2015年に国際的な枠組みである「パリ協定」が採択され、これをきっかけに世界的に脱炭素化が加速しました。
なぜ今、世界中で「脱炭素」が叫ばれているのか
世界が脱炭素へと舵を切った最大の理由は、気候変動が脅威として企業の経済活動や人命に直接的な損害を与え始めているからです。
脱炭素とカーボンニュートラルの違い
混同しやすいのが「脱炭素」と「カーボンニュートラル」、そして「ゼロカーボン」という3つの言葉です。これらの違いを正しく理解しましょう。
環境省によるそれぞれの定義と目標水準
まず「脱炭素」は、文字通り「炭素の排出を伴う経済活動そのものから脱却する」という非常に強い意志を含んだ言葉です。化石燃料の使用を極限まで減らし、根本的なエネルギーシステムや産業構造の変更を目指す文脈でよく使われます。
一方、「カーボンニュートラル」は、排出せざるを得なかったCO2をはじめとする温室効果ガスについて、人為的な「植林による吸収」や「技術的な除去」を差し引くことで、トータルの排出量を「実質ゼロ(ニュートラル)」にするという、より計算・管理的なアプローチに重きを置いた言葉です。
また、「ゼロカーボン」は、温室効果ガスの排出そのものを極限まで減らし、物理的にゼロに近づけること(あるいは排出量そのものをゼロにすること)を指します。
出典:環境省「脱炭素ポータル」
脱炭素・カーボンニュートラル・ゼロカーボンの違い

- 脱炭素
- 主にCO2削減を中心とした表現として使われることが多い
- カーボンニュートラル
- 排出量から吸収量(森林管理など)や除去量を差し引き、合計を「実質ゼロ」にする状態。製造や輸送でどうしても出てしまうガスを、他で相殺するという概念を含みます。
- ゼロカーボン
- 地方自治体(ゼロカーボンシティ)などの宣言において、地域住民や中小企業にも伝わりやすい分かりやすいスローガンとして多用される傾向があります。
実務上は、排出量算定では「カーボンニュートラル」、経営方針では「脱炭素」が使われることが多いです。
企業が脱炭素に取り組むメリットと実現までの課題
脱炭素に取り組むことは、会社にとってコスト以外の何物でもないのではないか、と考える企業担当者も多いのではないでしょうか。
企業が脱炭素を推進するメリット
- コスト削減と経営の安定化(エネルギー効率の向上)
- 省エネや再エネ導入は、電気代削減やエネルギー価格高騰対策につながります。
- 企業ブランドの向上と市場競争力の獲得
- 大手企業を中心としたBtoBビジネスの現場では、取引先に対して「脱炭素に対応していること」を取引や選定の条件に設定する動き(グリーン調達)が標準化しつつあります。
脱炭素の実現までに直面する主な課題とコスト
一方で、脱炭素の実現には、企業にとって現実的な課題やコストもあります。
脱炭素の実現には、「高額な初期投資」、取引先の協力や専門知識を要する「サプライチェーン全体の排出量把握」、そして「社内の技術・専門人材不足」という3つの大きな課題があり、これらを克服するには専門知識をもつ外部パートナーの活用が不可欠です。
脱炭素に向けて企業ができる取り組み
省エネルギーの徹底と再生可能エネルギーの導入拡大
脱炭素への取り組みは、まず低コストで経費削減に直結し、社内の理解も得やすい「省エネの徹底(LED化や空調最適化)」から着手するのが確実です。その後に、自家消費型太陽光や初期費用ゼロのPPAモデル、再エネ電力プランへの切り替えといった「再エネの導入拡大」へとステップアップしていくのが理想的な進め方です。
サプライチェーン全体での排出量削減(Scope1〜3)
本格的な脱炭素経営では、自社の直接排出(Scope1)や電気の使用(Scope2)だけでなく、原材料調達から廃棄まで(Scope3)を見据えたサプライチェーン全体での取り組みが必要です。
特に製造業や物流業はScope3の割合が大きいため、配送網の効率化や梱包資材の見直し、サプライヤーへの協力要請など、取引先を巻き込んだ包括的なアプローチが企業価値を高める鍵となります。
業界別に見る企業の脱炭素取り組み事例
製造業・建設業・物流業における脱炭素の事例
- 製造業の事例(エネルギー転換とプロセスの刷新)
- 大手化学・素材メーカーや機械部品工場などでは、従来の重油ボイラーから電気ボイラーへの転換(設備の電化)が進んでいます。また、ある中堅製造業では、工場の屋根全体に自家消費型の太陽光発電を導入し、年間数百トンのCO2削減と同時に電気代の大幅なカットに成功しています。
- 建設業の事例(資材のグリーン化とZEBの普及)
- 環境配慮型建材やZEBへの対応が進んでいます。
- 物流・運輸業の事例(輸配送の効率化と車両の電動化)
- 配送車両から排出されるCO2(Scope1)の削減が急務です。大手宅配企業では、ラストワンマイル(最終拠点から配送先まで)の車両をEV軽バンへ全面的に切り替える動きが加速しています。
自社に応用できる脱炭素施策の選び方

自社の施策を決定する際は、まず「自社の主な排出源がどこにあるか」を見極めましょう。オフィス主体の企業であれば、電力プランの切り替え(Scope2)が最も手っ取り早く効果が出ます。一方で、運送業であればエコドライブの徹底や車両の見直し(Scope1)、製造業であれば製造ラインの省エネ化や電化が最優先となります。
脱炭素の鍵を握る「再生可能エネルギー」の現状と課題
企業が脱炭素を進める上で、避けて通れないのが「電気のグリーン化」です。つまり、太陽光や風力といった「再生可能エネルギー(再エネ)」の活用ですが、実は日本の再エネ事情には、ビジネスを進める上で知っておくべき大きな構造的課題が存在します。
日本の再エネ導入状況と現在の限界
国を挙げて行われた固定価格買取制度(FIT制度)などの強力な後押しもあり、日本の再エネ(特に太陽光発電)の導入量は、ここ10年で飛躍的に増加しました。しかし、日本の総発電量に占める再エネの割合は、一部の欧州諸国と比較すると低い水準に留まっています。
これには、「送電網(グリッド)の容量制限」といったインフラ面の限界が大きく関係しています。そして現在、日本の再エネ拡大を阻む最も深刻な問題として浮上しているのが、次に解説する「出力変動問題」です。
太陽光・風力発電の「出力変動問題」

太陽光発電は昼間の晴れた日しか発電できず、風力発電は風が吹いているときしか発電できません。このように、人間の都合で発電量をコントロールできない性質を「出力変動」と呼びます。
電力系統では、供給と需要のバランスを常に保つ必要があります。このバランスが少しでも崩れると、送電網の電気の品質(周波数など)が乱れてしまいます。
現在、春や秋の天気が良い休日の昼間など、電力の需要(工場の休みなどで消費が少ない)に対して、太陽光発電が大量に電気を作ってしまう日が増えています。電気が余りすぎると送電網がパンクするのを防ぐため、電力会社が発電事業者に対して「今は発電を止めてください」と命令する「出力制御(オンライン制御)」が、日本全国のエリアで頻発するようになっています。これが再エネをこれ以上増やせない大きなボトルネックの一つとなっているのです。
再エネ拡大と脱炭素社会を支える「系統用蓄電池」の重要性
この「電気が余る問題」と「足りない問題」を根本から解決し、日本の脱炭素化をもう一段前へ進めるための解決策として、いまエネルギー業界や投資家から注目が高まっているのが「系統用蓄電池」です。
系統用蓄電池の役割と必要とされる理由
系統用蓄電池とは、工場や住宅などの「需要家(使う側)」の敷地に設置する一般的な蓄電池とは異なり、電力インフラである「送電網(系統)」に直接接続する大型の蓄電池システムのことです。
- 昼間: 電気が余り電力卸市場での価格が安くなっている時間帯に、系統用蓄電池に大量の電気を充電して貯め込みます。これにより、本来捨てられるはずだった再エネの無駄(出力制御)を防ぎます。
- 夕方・夜間: 人々の生活や工場の稼働で電力需要がピークを迎え、電気が不足して価格が高騰する時間帯に、貯めておいた電気を送電網へ放電します。
系統用蓄電池が日本中に普及すれば、再エネの出力変動を完全に吸収できるようになり、電力網を安定に保ったまま、再エネの導入量をさらに増やすことが可能になります。
ビジネスチャンスとしての系統用蓄電池事業への参入
この系統用蓄電池は、単に環境に貢献するだけの設備ではありません。電力自由化と法改正が進んだ日本において、企業の新しい収益源や長期的な投資対象として注目されています。
系統用蓄電池事業の市場性と複数の収益源
脱炭素の流れに乗り、国も系統用蓄電池の設置に対して手厚い補助金を出すなど、市場の拡大を全面的にバックアップしています。この事業の最大の魅力は、その収益構造が単一ではなく、複数の市場から安定したリターンを得られる点にあります。
- 電力取引市場(タイムシフト益)
- 日本卸電力取引所(JEPX)において、電気の価格が安い昼間に電気を買い、価格が高くなる夕方や冬・夏のピーク時に売ることで、その差額を収益として確保します。
- 需給調整市場
- 電力の周波数や需給バランスを一定に保つための調整力を一般送配電事業者に提供することで、その対価を得る市場です。
- 容量市場
- 日本全体の将来の供給力を確保するための市場です。供給力を提供する義務を果たすことを条件に、安定的な容量収入を中長期的に得ることができます。
事業参入におけるハードルと専門パートナーへ相談する意義

魅力的な成長市場である一方で、個社だけで簡単に参入するには大きなハードルがあるのも事実です。系統用蓄電池事業を成功させるためには、非常に専門性の高い数々の論点をクリアしなければなりません。
まず、適切な土地の選定が必要です。大型の蓄電池を置くための十分な広さがあり、かつ電力会社の変電所や送電線が近く、重い電流を流せるだけの空き容量がある土地(接続容量)を見つけ出すのは容易ではありません。電力会社との「電力接続に関する複雑な協議・手続き」や、各種法令(電気事業法、消防法、都市計画法など)のクリアも必須です。
さらに、日々1分1秒単位で激しく変動する電力価格を予測し、「今、市場で売るべきか、調整力として待機すべきか」を自動で最適制御する「高度な運用体制(アルゴリズム運用)」の構築も求められます。これらを自社のリソースだけで判断し、数億円規模の初期投資を踏み切るには、リスク負担は小さくありません。
そのため、この市場へ参入を検討する、あるいは自社の遊休地を活用したいと考える企業にとって専門知見を持った実績のある事業パートナーと組むことが極めて重要な戦略となります。
まとめ:脱炭素の基礎知識を活かして次のステップへ

「脱炭素」や「カーボンニュートラル」は、現代を生きるすべての企業にとって、避けては通れない最優先の経営課題です。
自社の省エネやオフィス・工場の再エネ化を進めることはもちろん重要ですが、脱炭素は、新たな事業機会としても注目されています。
再エネのポテンシャルを最大限に引き出すインフラである「系統用蓄電池事業」は、これからの脱炭素社会になくてはならない存在であり、同時に先行者利益を狙える魅力的なフロンティアです。
「自社に蓄電池事業に参入できる可能性があるのだろうか」「所有している土地を有効活用して、脱炭素ビジネスに関われないだろうか」「実際の収益性や進め方を、専門家の視点で一度シミュレーションしてほしい」そうした疑問や興味をお持ちの企業は、まずは専門の事業パートナーに相談をしてみてはいかがでしょうか。
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