東京電力の送電線マップとは?公開されている情報の全体像


公開日:2026.07.31 更新日:2026.07.21
東京電力の送電線マップとは?公開されている情報の全体像

再生可能エネルギー発電所の開発や系統用蓄電池の設置を検討する際、検討している土地の近くに発電した電気を流せるだけの系統容量 (空き容量)があるかを確認する必要があります。事業者が事業性を判断するための重要なデータインフラとして提供されているのが、送電線マップです。

目次

一般向けと需要家向け・事業者向け情報の一覧と違い

東京電力が公開している系統関連の情報は、アクセスする人の目的や立場に合わせて、大きく「一般向け(需要家向け含む)」と「事業者向け(接続検討を行う人向け)」に分かれています。

区分主な対象者公開されている主な情報内容活用場面・目的
一般向け・需要家向け情報・土地オーナー・一般の電力契約者・自家消費太陽光を検討する企業・エリア全体の需給状況・系統混雑の概況・基本的な手続き案内・所有地のおおまかな系統状況の把握・自家消費型太陽光の導入検討
事業者向け情報一覧・再エネ開発事業者・系統用蓄電池の事業者・選定を進める実務担当者・空容量(空き容量)マップ・送電線・変電所ごとの熱容量・ウェルカムゾーン情報・具体的な開発候補地の絞り込み・系統接続可否の一次判断・接続申請の事前準備

一般向けの情報は電力の需給バランスに関わるものが中心です。

一方で、10kW以上、特に高圧・特高(特別高圧)クラスの太陽光や風力、そして数メガワット規模の系統用蓄電池を導入しようとする事業者の場合、流通設備(送電線・基幹変電所など)の具体的な空容量マップにアクセスし、詳細なデータを参照する必要があります。

東京電力送電線マップの使い方と系統空き容量の確認手順

ターゲットエリアの空容量(空き容量)を調べる3ステップ

ステップ1:東京電力パワーグリッドの専用ポータルへアクセス

まずは東電PGの公式ホームページ内にある専用ポータルにアクセスします。

ステップ2:地図(マップ)上から対象のエリア・変電所を指定する

検索窓に住所や郵便番号を入力するか、地図をドラッグ・拡大しながら、目的の土地(開発候補地)がある場所まで移動します。送電線のルートや主要な変電所や開閉所がプロットされています。

ステップ3:送電線・変電所をクリックし、詳細な空容量データを出力・確認

調べたい場所の近くを通っている送電線や、最寄りの基幹変電所のアイコンをクリックし、その設備における「熱容量面での空容量」「電圧上昇面での制限」「上位系統への影響」といった詳細なデータシートを検索します。ここで「〇〇MW(メガワット)」と書かれている数値が、現時点で受け入れ可能な空き容量の目安となります。

出典:東京電力パワーグリッド「当社における系統情報について」

送電線マップを利用する際の注意点・留意点

  • リアルタイムの状況ではない: マップに反映されている空容量は定期的に更新されているものの、リアルタイムの先着優先枠を反映しているわけではありません。同時並行で競合他社が同じ変電所に対して接続申請を提出している可能性があります。
  • 先着順(先アクセスルール)の存在: 日本の電力系統は原則として「申し込み手続きが正式に受理された順番」で枠が確保されます。マップ上で「空きあり」となっていても、既に他の事業者が回答を待っている状態であれば、その後ろに並ぶことになります。
  • あくまで「目安」であること: マップに表示される数値は、一定のシミュレーション条件に基づいた「机上の計算値」です。実際の接続可否や必要な対策工事の費用は、東京電力に個別の「接続検討」を申し込んで正式な回答を得るまでは確定しません。

接続コストを抑える「ウェルカムゾーン」の確認方法と活用法

再エネや蓄電池の開発において事業性を大きく左右するのが「系統接続コスト(工事負担金)」です。変電所の増強や送電線の張り替えが必要になると、数千万円から場合によっては数億円規模の費用が発生し、プロジェクト自体が頓挫することもあります。こうした事業者側のコスト負担を軽減し、系統に余裕がある場所への立地を誘導するために東京電力が設定しているのが「ウェルカムゾーン」です。

東京電力エリアにおけるウェルカムゾーンのマップ上での探し方

ウェルカムゾーンとは、一言で言えば「現時点で送電線や変電所のキャパシティに比較的余裕があり、大規模な増強工事を行わなくても比較的低コストかつ短期間で発電設備や蓄電池を接続できる可能性が高いエリア」のことです。東電PGでは、系統全体の効率的な運用のために、このウェルカムゾーンの情報を事業者に広く公開しています。

出典:東京電力パワーグリッド「ウェルカムゾーンマップ」

土地選定でウェルカムゾーンを活用する際のチェックリスト

ウェルカムゾーン内で土地を見つけることができれば、開発のハードルは大きく下がります。候補地を選定する際は以下の項目を確認し、総合的な視点から事業性を評価してください。

  • 用途地域・法的規制をクリアしているか: 系統のウェルカムゾーンであっても、その土地が「農地法」による農地転用が不可能な区域であったり、地方自治体の条例で禁止・抑制されているエリアであれば開発自体ができません。
  • 地形や土壌、災害リスクに問題はないか: 傾斜が急すぎる土地や、ハザードマップで土砂災害警戒区域・浸水想定区域に入っている土地は、造成費用が高騰したり、将来的な損害保険料が上がったりして事業性を圧迫します。
  • 土地の境界や権利関係がクリアか: 地主が複数にまたがっている場合や、相続登記がなされていない土地は、契約までに膨大な時間がかかります。
  • 「先着順」で埋まっていないか: ウェルカムゾーンは他社にとっても魅力的なエリアです。マップ上で指定されてから時間が経っている場合、すでに多くの事業者が群がり、実質的な空き容量は残りわずかになっているケースが多々あります。

東京電力マップと「全国」送電線マップの比較と使い分け

東京電力エリア内だけで事業を展開する場合は東電のマップだけで事足りますが、複数の電力管内を跨いで広範囲に候補地を探す場合、各電力会社のサイトを個別に行き来するのは非効率です。そこで活用したいのが、日本全国の系統情報を一元的に確認できる「全国送電線マップ」です。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「一般送配電事業者及び配電事業者の空き容量マップについて」

Googleマップをベースにした全国送電線マップとの違い

これらは多くの場合、私たちに馴染み深い「Googleマップ」をベースとした地図情報として採用しています。

まず、社内で「次の四半期は、関東・中部・東北のいずれかで条件の良い土地があれば蓄電池を仕込みたい」というような広域の探索フェーズであれば、全国送電線マップ(Googleマップベース)を開くのが効率的です。航空写真モードに切り替えることで、送電線の周囲に十分な広さの平地があるかどうかも一目で当たりをつけることができます。

その後、ターゲットが東京電力エリア内に絞り込めた段階で、東京電力独自の送電線マップへと移行します。そこから、より解像度の高い最新の空容量や、上位系統の制約条件、ウェルカムゾーンの詳細な境界線をチェックするという「2段階の使い分け」を行うことで、情報収集のスピードと正確性を両立させることができます。

出典:塔マップ

送電線マップで空き容量を確認した後の「接続検討」ステップ

事前相談から東京電力への「接続検討」申請までの流れ

  1. 書類上・手続き上の一次審査にあたる「接続検討の申請」
    1. 取得予定の土地の地番や、予定している設備容量(kW)を持って、東電の窓口へ事前確認を行い、マップの数値と大まかな方向性を擦り合わせる
  2. 接続検討の申請書類準備を行います。
    1. 発電設備(または蓄電設備)の仕様書、単線結線図、設置場所の地図などを揃える
  3. 東京電力へ正式に「接続検討」を申請
    1. ポータルサイト等を通じて申請書を提出し、検討費用(通常、数十万円程度)を支払う

申請から回答が返ってくるまでには、高圧・特高クラスになると1〜3ヶ月以上の期間がかかります。

回答受領から費用試算(工事負担金)・系統接続までの流れ

  1. 東京電力から接続検討の回答書が届いたら、回答書の精査と「工事負担金」の確認を行う
    1. 回答書に記載されている「接続するために必要な工事内容」と「その費用試算(工事負担金)」を確認する
    2. 費用が想定を超えていた場合、事業性を再計算し、進めるか撤退かを判断する
  2. 契約申込み(接続契約の締結)を行う
    1. 事業性がクリアできれば正式に東電と「接続契約」を結び、工事負担金を期日までに支払って枠を確定させる
  3. 設備工事・系統接続(運転開始)
    1. 自社側の施設建設と並行して東電側の補強工事が行われ、完了後に物理的に接続されて商用運転がスタートする

ここで最も重要になるのが「工事負担金」の金額です。もし近隣の送電線の空き容量がギリギリだった場合、回答書に「対策工事が必要:費用1億5,000万円」といった厳しい条件が突きつけられることもあります。

一方で、前述のウェルカムゾーンを上手く活用できていれば、軽微な工事のみでクリアできる可能性が高くなります。

空き容量不足の解決策として注目される「系統用蓄電池事業」

ここまで記事をお読みいただき、「送電線の空き容量を見つけるのは想像以上にハードルが高そうだ」「空き容量ゼロと言われたら諦めるしかないのか」と不安を感じた方も多いのではないでしょうか。

実際、東京電力エリアの主要な適地では、太陽光発電による系統の奪い合いが激化しており、単純に「電気を作って流す」だけの再エネ開発は限界を迎えつつあります。

こうした「空き容量不足」「系統の混雑」という日本の電力インフラ最大の課題を解決し、同時に新しいビジネスチャンスを生み出す切り札として、いま急速に市場が拡大しているのが「系統用蓄電池事業」です。

再エネ拡大に伴って系統用蓄電池の必要性が高まる背景

系統用蓄電池とは、太陽光発電所のように自ら電気を作るのではなく、送電線に直接つなぎ、「系統全体で電気が余っている時に充電し、足りない時に放電する」ための巨大な蓄電施設です。

従来の太陽光発電は、お昼の晴天時に一斉に発電するため、その時間帯だけ送電線がパンクしてしまいます。しかし系統用蓄電池であれば、送電線が混雑しているお昼にはむしろ系統から電気を充電することで混雑を緩和できます。そして、電気が不足して送電線に余裕ができる夕方や夜間に、蓄えておいた電気を放電するのです。

このように、系統用蓄電池は電力インフラの「調整弁」として機能するため、系統の空き容量を実質的に増やすためのインフラとして、国や電力会社からも導入が後押しされています。

蓄電池事業の収益源:容量市場・需給調整市場・仲介取引の仕組み

土地オーナーや開発事業者にとって、系統用蓄電池は高い事業性と複数の安定した収益源を持つビジネスとして魅力があります。従来のFIT制度に依存した太陽光発電とは異なり、主に以下の「3つの異なる市場」から立体的に収益を得ることができます。

1. 電力取引市場(JEPX)での差益(アビトラージ)

   ・電気代が安い時間帯(例:昼間)に電気を安く買い(充電)

   ・電気代が高い時間帯(例:夕方・朝方)に電気を高く売る(放電)

2. 需給調整市場

   ・電力系統の周波数を一定に保つための「瞬時の調整力」を提供し、待機していること自体に対して報酬が支払われる

3. 容量市場

   ・日本国内の将来の供給力を確保するための市場。供給義務を果たすことを条件に、中長期的な安定的な容量収入を得られます。 

このように、系統用蓄電池事業は「電気の価格差」「調整力」「供給力」という3つの価値を同時に市場へ提供することで、リスク分散された収益構造(マルチモネタイズ)を構築できます。再エネの導入が進めば進むほど価格差や調整力の価値は高まるため、長期的な成長が見込める市場です。

系統用蓄電池の開発・運用を成功させるプロの選び方

空き容量問題をクリアし、かつ高い収益性が見込める系統用蓄電池事業ですが、高い参入ハードルが存在します。

土地選定から電力接続まで立ちはだかる専門的な壁

系統用蓄電池のプロジェクトを自社単独で推進しようとした場合、以下のような問題に直面することになります。

  • 高度な土地選定と東電との折衝: 今回解説した「送電線マップ」の読み解きはもちろん、高圧・特高の系統接続における複雑なテクニカルな協議をハンドリングしなければなりません。
  • 多額の初期投資とファイナンス: コンテナサイズの巨大な蓄電池を導入するためには数億円規模の初期投資が必要です。銀行からのプロジェクトファイナンス組成には、事業計画の信頼性が厳しく審査されます。
  • 24時間365日の市場運用体制: 3つの市場のどこに、どのタイミングで電力を割り振れば最も儲かるのか。気象予測や価格予測データをもとに、AIなどを駆使してリアルタイムに充放電を制御するアルゴリズム運用が必要となります。

専門知見を持つ事業パートナーへ個別条件を相談するメリット

信頼できる専門のプロに相談することで、以下のようなメリットを享受できます。

  • 事業性のシミュレーション精度が劇的に上がる: 所有している土地の地番をもとに、「その場所の送電線マップの裏にある本当の空き容量」や「将来どれだけの収益を生み出せるか」を高精度で見極めてくれます。
  • 土地選定から接続申請までを一括して任せられる: 東京電力との煩雑な手続きや技術的な仕様のやり取りをすべて代行してもらえるため、自社の社内リソースを圧迫しません。
  • 最適な事業スキームの提案を受けられる: 「自己事業としてやりたい」「リスクは負いたくないので土地を貸し、安定した賃貸収入を得たい」など、それぞれのニーズに合わせた最適な参入方法をコーディネートしてくれます。

まとめ:東京電力の送電線マップを起点に確実な事業計画を

送電線マップは開発の第一歩となる重要な情報源です。しかし、マップ上で空き容量を見つけることがゴールではありません。

「自社が保有している土地周辺の系統環境はどうなっているのか」

「実際の進め方や、自社の個別条件を踏まえて参入可能性を判断したい」

そう感じられた方は、まずは送電線マップの確認と並行して、系統用蓄電池のプロフェッショナルへ相談してみてはいかがでしょうか。

井上 勝司
井上 勝司 本記事の執筆・監修者

株式会社インターコンテック所属 マネージングディレクター / 事業戦略責任者

太陽光発電システムの企画・開発・流通・販売まで、再生可能エネルギー事業の上流から下流までを一貫して経験する事業戦略責任者。再生可能エネルギー業界で18年以上にわたり、太陽光発電事業を中心に、事業開発、EPC、プロジェクトマネジメント、金融ストラクチャリングなど幅広い分野に携わる。

Non-FIT制度開始以降は、大規模発電所から分散型・地産地消型電源の開発まで数多くのプロジェクトを推進し、スタンフォード大学発の太陽光パネルメーカーやEPC事業者で培った知見を活かして事業開発を実施。RE100を推進する企業への案件組成や、自社での発電設備保有・電力卸取引など、多様な事業スキームを手掛けてきた。近年は系統用蓄電池やNon-FIT電源開発にも注力し、事業戦略の立案から実行までを支援している。

慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(経営学修士〈Executive MBA〉)。経営学・都市社会学を専門とし、役員歴4年、再生可能エネルギー業界歴18年以上。

太陽光発電システムの企画・開発・流通・販売まで、再生可能エネルギー事業の上流から下流までを一貫して経験する事業戦略責任者。再生可能エネルギー業界で18年以上にわたり、太陽光発電事業を中心に、事業開発、EPC、プロジェクトマネジメント、金融ストラクチャリングなど幅広い分野に携わる。

Non-FIT制度開始以降は、大規模発電所から分散型・地産地消型電源の開発まで数多くのプロジェクトを推進し、スタンフォード大学発の太陽光パネルメーカーやEPC事業者で培った知見を活かして事業開発を実施。RE100を推進する企業への案件組成や、自社での発電設備保有・電力卸取引など、多様な事業スキームを手掛けてきた。近年は系統用蓄電池やNon-FIT電源開発にも注力し、事業戦略の立案から実行までを支援している。

慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(経営学修士〈Executive MBA〉)。経営学・都市社会学を専門とし、役員歴4年、再生可能エネルギー業界歴18年以上。

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