デマンドレスポンスとは:仕組みやメリット・最新動向を解説


公開日:2026.09.01 更新日:2026.09.01
デマンドレスポンスとは:仕組みやメリット・最新動向を解説

再エネの普及・拡大や火力発電の休廃止にともない、電力の安定供給を支える新たな仕組みとしてデマンドレスポンス(DR)の重要性が高まっています。従来のように発電側だけで調整するのではなく、消費者側が能動的に電力需要をコントロールする手法が、次世代のエネルギーマネジメントとして不可欠となっている状況です。

そこでこの記事では、デマンドレスポンスの基本概念から、下げDR・上げDRの仕組み、参加企業が得られる電気代カットやインセンティブ収入といったメリットをわかりやすく紹介します。系統用蓄電池の活用による需給調整市場での収益最大化スキームまで、実務・事業検討に直結する情報をまとめていますので、最後までご一読ください。

1. デマンドレスポンスとは何か?意味と供給・需要の基礎知識

まず最初に、デマンドレスポンスとは何か、意味や供給・需要の基礎知識について紹介します。

1-1. デマンドレスポンスとは?需要側からバランスを整える仕組み

デマンドレスポンス(DR)とは、電力の需給状況に合わせて消費者側が電力使用量を制御・調整し、系統全体のバランスを保つ仕組みのことです。

電力システムにおいては計画値同時同量制度のもと、徹底した運用管理が求められます。電力の供給量と需要量を常に一致させる原則から外れた管理をすると、供給と需要のバランスが崩れて周波数が乱れ、最悪の場合、広域で大規模停電が発生するブラックアウトを引き起こす深刻なリスクが生じるためです。

従来の電力供給は、需要の変動に合わせて火力発電所などの供給側である発電所が出力を調整して対応していました。これに対しデマンドレスポンスは、需要側である消費者側が主体的に電力使用量をコントロールすることでバランスを維持する、画期的な構造転換をもたらしています。

1-2. 従来の供給側調整との違いと注目される背景

デマンドレスポンスが注目される背景には、再生可能エネルギーの大量導入と火力発電所の休廃止にともない、需要側を柔軟に動かす脱炭素型の調整力が不可欠となった社会情勢の変化があります。

近年、化石燃料を使用する火力発電所は、老朽化によって休廃止が加速しており、ピーク時に比べ供給予備力が大幅に低下しています。あわせて、太陽光や風力といった再エネ発電の拡大により、日中は電力が過剰となって出力制御が増える一方で、夕方には急激に需要が高騰するダックカーブ現象も深刻です。

さらに、2023年4月施行の改正省エネ法において「電気の需要の最適化(DR)」が新たな評価項目となりました。企業には環境対応としてDRへの取り組みが強く求められています。そこで、自家消費型太陽光や蓄電池の導入から一歩進めて、系統用蓄電池を活用した新たな収益モデルへの参入を見据えるうえでも、DRの理解は欠かせないプロセスと言えます。

参照URL:
・経済産業省:資源エネルギー庁「ディマンド・リスポンスってなに?」
・エナリス「デマンドレスポンスとは?仕組みや参加するメリット、導入までの流れをわかりやすく解説」
・経済産業省:資源エネルギー庁「2023年4月施行の「改正省エネ法」、何が変わった?」

2. デマンドレスポンスの仕組みと電力需要制御のプロセス

ここでは、デマンドレスポンスの具体的な仕組みや、電力需要を制御するプロセスについて紹介します。

2-1. 下げDR(需要抑制)と上げDR(需要創出)のメカニズム

デマンドレスポンスとは、需給逼迫時の「下げDR」と再エネ過剰発生時の「上げDR」という双方向の制御により、電力系統の安定を維持する仕組みです。

以下で、デマンドレスポンスの双方向メカニズムを表にしました。

【デマンドレスポンスにおける下げDRと上げDRの比較表】

区分下げDR(需要抑制型)上げDR(需要創出型)
発動する状況夏・冬の需要ピーク時や発電所トラブル時春・秋の休日など太陽光発電の電力余剰発生時
制御方法機器の停止や自家発電稼働で節電する蓄電池への充電や工場の前倒し稼働をする
生み出される価値節電量を発電相当とみなすネガワット市場価格暴落(0.01円/kWh等)時の余剰電力吸収

このように、下げDR・上げDRのどちらの制御も、市場の状況に応じてベストなアクションをおこなうことで、経済的メリットを手に入れることができます。

2-2. 消費者・アグリゲーター・送配電事業者の役割と電力使用量の管理

デマンドレスポンスでは、消費者や電力会社である送配電事業者に加え、工場・家庭などの需要家や、太陽光・蓄電池などの分散型エネルギーリソースを一つに束ね、発電所のようにコントロールして電力の需給バランスを調整する事業者としてアグリゲーターの存在が重要です。

アグリゲーターは多数の消費者の電力使用量をIoTやAIで束ねることで、単体では小さなリソースを大規模な調整力へと変換できる役割を担います。

以下で、DRのバリューチェーンにおける、3者の連携イメージを紹介します。

・一般送配電事業者(TSO)

系統全体の需給状況を監視し、アグリゲーターへ発動指令を出します。

・アグリゲーター

分散する設備群をVPP(仮想発電所)技術で集約し、AI制御で一括コントロールします。

・消費者(工場・ビル・家庭など)

指令に応じて蓄電池の放電や稼働調整をおこない、電力使用量を制御します。

現場レベルの実務では、前日通知から当日数分前通知までのタイムラインで発動指令に応答します。専門的な通信制御や精算管理の活用によって標準的な使用量を示すベースラインと実際の使用量との差分が精確に計測され、供出実績として評価される流れです。

参照URL:
・経済産業省:資源エネルギー庁「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)」
・パナソニック「デマンドレスポンス(DR)とは?意味やメリットをわかりやすく解説」 

3. 消費者・事業者が得るデマンドレスポンスのメリットと参加方法

ここからは、消費者や事業者がデマンドレスポンスへの参加で得られるメリットや、具体的な手続き方法について見ていきましょう。

3-1. 電力使用量の削減とインセンティブ収入によるメリット

デマンドレスポンスは電気代の削減につながるうえ、DR発動時のインセンティブ報酬を獲得できるダブルの経済的メリットが魅力です。需要ピーク時に電力使用量を抑えることで、過去1年間の最大デマンド値を引き下げ、毎月の基本料金を長期的にカットできる利点が手に入ります。あわせて従量料金も削減されるため、直接的なコスト抑制効果は非常に大きいと言えるでしょう。

また、アグリゲーターとの契約に基づき、要請に応じた削減量や需要創出量(kWh)、確保容量(kW)に応じてインセンティブ報酬が直接支払われます仕組みもポイントです。 

このほか、CO2排出量の削減や、Scope2において自社が他社から供給された電気等の使用に伴う間接排出量削減の実績を可視化することで、企業のESG評価や環境価値を高められるメリットもあります。

3-2. DRに参加するための必要設備・アグリゲーターとの契約手続き

デマンドレスポンスに参加する際は、自動制御システムや蓄電池の導入、専門アグリゲーターとの適切な契約締結が参加条件となります。具体的にDRへ参加するには、スマートメーターのほか、IoT通信端末やEMS(エネルギー管理システム)をはじめ、制御対象となる蓄電池や自家発電機などの設備が必要です。

以下で、導入手続きのステップ4つを見ていきましょう。

【デマンドレスポンス導入手続きのステップ4つ】

ステップ1:ポテンシャル診断

アグリゲーターによる現地調査や節電余力の診断を受ける。

ステップ2:契約締結

DRプログラムやアグリゲーターとの契約を締結する。

ステップ3:現地統合試験

通信および自動制御のシステムテストを実施する。

ステップ4:実運用開始

発動指令に応じた自動制御・手動制御を開始する。

なお、契約時には、要請に応じられなかった際の報酬の減額といったペナルティ条項や、本業に影響を出さないための制御上限設定の確認が重要です。

参照URL:
・経済産業省:資源エネルギー庁「ディマンド・リスポンスってなに?」
・エナリス「デマンドレスポンスとは?参加するメリットや基礎知識、実施までの流れ、注意点をわかりやすく解説します」

4. 系統用蓄電池・再エネを活用したデマンドレスポンスと収益最適化

ここでは、系統用蓄電池や太陽光発電を活用してデマンドレスポンスの収益を最適化する最先端モデルを紹介します。

4-1. 系統用蓄電池・太陽光発電をDRリソースに組み込む制御技術

高い応答性能を持つ系統用蓄電池は、デマンドレスポンスにおいて非常に強力で柔軟な動的アセットのひとつです。工場などの生産ラインを停止する制御と異なり、蓄電池は事業活動に影響を与えることなく、ミリ秒から秒単位で高精度な充放電制御を実行できる優れた特徴を持ちます。

最新の運用では、気象予測、JEPX(日本卸電力取引所)の市場価格予測、バッテリーの劣化カーブをAIが解析する自動充放電制御プラットフォームの活用がスタンダードになってきました。AIが自家消費からDR発動、市場売電まで、すべて自動で切り替えることで、アセットの価値を極限まで引き出す運用ができます。

4-2. 需給調整市場や容量市場でのマルチスタッキング

系統用蓄電池の収益化を考える場合、単一の売電にとどまらず、複数の電力市場を戦略的に組み合わせるマルチスタッキングが事業性を最大化させるポイントです。系統用蓄電池をDRに組み込むことで、以下の複数の市場から二重、三重で収益を得るレベニュースタッキングが実現できます。

・JEPXスポット市場

電力の価格差を利用して利益を得るアービトラージ取引によって、安値充電・高値放電の売買差益を狙う。

・需給調整市場

一次〜三次調整力へ予備力を供出し、調整容量であるΔkW(デルタキロワット)と電力量のkWhの対価を獲得する。

・容量市場(LTDAなど)

将来の供給力提供に対する安定した固定収入として、kWあたりの報酬を織り込む。

このように、一般送配電事業者である電力会社と余力活用契約を結び、専用線オンラインなどでストレージ式運用を行うアプローチが浸透しています。 

ただし、複雑な市場取引や系統接続協議を個社だけで判断・推進するのは専門的論点が多すぎる課題が残されています。

参照URL:
・経済産業省:資源エネルギー庁「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)」
・アスエネ「【徹底解説】エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)とは?VPP/DRと最新ガイドラインの全容」

5. デマンドレスポンスの電力需要市場動向と今後の拡大予測

ここからは、デマンドレスポンスにおける最新の電力需要市場動向と、今後の市場拡大の予測について見ていきましょう。

5-1. 低圧リソース解禁と国内外におけるDR供給能力の市場拡大

2026年4月より、低圧リソース需給調整市場の参入が解禁されたことにより、DR市場は「低圧VPP元年」として爆発的な拡大期に入った状況です。

従来のDRは高圧や特高(特別高圧)といった法人需要家が中心でした。しかし、2026年4月の制度改定により、家庭用蓄電池やEV(V2H)、エコキュートなどの低圧リソースが、機器個別計測によって需給調整市場へ直接参入できるようになりました。一連の低圧開放により、国内外でDER(分散型エネルギーリソース)のアグリゲーション市場が急成長中です。数百万kW規模の潜在的な供給能力が顕在化し、市場全体の拡大を強力に牽引しています。

加えて、国が実施する「DR家庭用蓄電池事業」は一般に「DR補助金」などと呼ばれ、普及を後押ししています。

このように、需要家側にとっても制度を活用しやすい環境が整っており、さらなるシナジー効果が期待されます。

5-2. 系統接続のハードルと個社判断の難しさ・専門パートナー活用の重要性

過密状態が続く系統連系枠の確保や多層的な関係法令、2027年以降のサイバーセキュリティ対応を個社だけで判断・推進することは大変困難と言えます。

理由として、系統用蓄電池や大型リソースの接続には、全国で113GWに及ぶ系統アクセス滞留のバックログ問題や、無補償の出力制御を受け入れるノンファーム型接続の受け入れなど、実務上の大きな壁が複数存在するためです。あわせて、改正消防法による10kWh/20kWhの壁や、電気事業法、都市計画法などの厳格な法令適合のプロセスも求められます。

なかでも、2027年4月より、一部は10月から、IP通信制御機器へのセキュリティ適合評価が原則義務化されるため、JC-STARレベル1以上の認証取得への対応も避けて通れません。 

これほど専門性の高い論点を自社単独でリサーチし、事業性を見極める作業をおこなうことは客観的に見て非常にハードルが高いです。そこで、実績ある専門パートナーへ相談し、自社の置かれた条件を踏まえた具体的なシミュレーションの実施を進めることが、事業化を成功させる唯一のアプローチとなります。

参照URL:
・経済産業省:資源エネルギー庁「ディマンド・リスポンスってなに?」
・電力需給調整力取引所「需給調整市場とは」
・「令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業【公式】」

井上 勝司
井上 勝司 本記事の執筆・監修者

株式会社インターコンテック所属 マネージングディレクター / 事業戦略責任者

太陽光発電システムの企画・開発・流通・販売まで、再生可能エネルギー事業の上流から下流までを一貫して経験する事業戦略責任者。再生可能エネルギー業界で18年以上にわたり、太陽光発電事業を中心に、事業開発、EPC、プロジェクトマネジメント、金融ストラクチャリングなど幅広い分野に携わる。

Non-FIT制度開始以降は、大規模発電所から分散型・地産地消型電源の開発まで数多くのプロジェクトを推進し、スタンフォード大学発の太陽光パネルメーカーやEPC事業者で培った知見を活かして事業開発を実施。RE100を推進する企業への案件組成や、自社での発電設備保有・電力卸取引など、多様な事業スキームを手掛けてきた。近年は系統用蓄電池やNon-FIT電源開発にも注力し、事業戦略の立案から実行までを支援している。

慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(経営学修士〈Executive MBA〉)。経営学・都市社会学を専門とし、役員歴4年、再生可能エネルギー業界歴18年以上。

太陽光発電システムの企画・開発・流通・販売まで、再生可能エネルギー事業の上流から下流までを一貫して経験する事業戦略責任者。再生可能エネルギー業界で18年以上にわたり、太陽光発電事業を中心に、事業開発、EPC、プロジェクトマネジメント、金融ストラクチャリングなど幅広い分野に携わる。

Non-FIT制度開始以降は、大規模発電所から分散型・地産地消型電源の開発まで数多くのプロジェクトを推進し、スタンフォード大学発の太陽光パネルメーカーやEPC事業者で培った知見を活かして事業開発を実施。RE100を推進する企業への案件組成や、自社での発電設備保有・電力卸取引など、多様な事業スキームを手掛けてきた。近年は系統用蓄電池やNon-FIT電源開発にも注力し、事業戦略の立案から実行までを支援している。

慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(経営学修士〈Executive MBA〉)。経営学・都市社会学を専門とし、役員歴4年、再生可能エネルギー業界歴18年以上。

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