カーボン・クレジットの東証市場や市場価格と市場参加者を解説


公開日:2026.09.21 更新日:2026.09.15
カーボン・クレジットの東証市場や市場価格と市場参加者を解説

脱炭素経営やGX(グリーントランスフォーメーション)の推進が広がるなか、環境価値を売買するカーボン・クレジットが注目されています。東京証券取引所に開設された東証市場の本格運用にともない、市場を介した透明性の高い取引制度が整備されつつある状況です。

ただし、カーボン・クレジットとは何か、取引される市場とはどのような仕組みなのかをはじめ、市場システムの概要や市場参加者の要件、市場価格の推移や市場日報・レポートの活用法をすみずみまで理解するのは、情報量も多く大変なことです。

そこでこの記事では、カーボン・クレジットの基礎から東証市場の売買ルール、取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会の最新動向、系統用蓄電池での活用までポイントをまとめて紹介します。自社の脱炭素戦略や事業参入のために参考となる情報にも触れていきますので、最後までご一読ください。

目次

1. カーボン・クレジットとは?市場とは何か基本概念を解説

はじめに、カーボン・クレジットの基本について、世界と日本における市場とは何か、制度の全体像を中心に紹介します。

1-1. カーボン・クレジットとは?温室効果ガス削減量を権利化する仕組み

カーボン・クレジットとは、省エネ設備の導入や再エネ活用、造林・森林管理等による温室効果ガスの排出削減量・吸収量を認証し、売買可能な権利としたものです。

通常、1クレジットは1t-CO2e(CO2換算トン)に相当します。自社のみで直接削減する対応が難しい企業が、外部で創出された環境価値を購入して相殺するカーボンオフセットをおこなうための経済的メカニズムとして機能しています。売主であるクレジット創出者と、買主である排出削減目標を負う企業を取引で結びつける仕組みを通して、社会全体の脱炭素化を促進します。

1-2. 市場とは?コンプライアンス市場とボランタリー市場の違い

カーボン・クレジットが取引される市場とは、法的義務の有無によってコンプライアンス(義務的)市場とボランタリー(自主的)市場の2つに大きく分けられます。

【コンプライアンス市場とボランタリー市場の違い】

項目コンプライアンス市場ボランタリー市場
法的義務の有無あり(キャップ&トレード等に基づく義務)なし(自主的なCSR・ESG・SBT達成目的)
主な運営・認証主体政府、規制当局(EU-ETS、GX-ETS等)民間認証機関(Verra/VCS、Gold Standard等)
取引タイミング事後に確定した排出実績と枠の差を精算事前の将来削減・除去見込みでの取引も活発
公的報告への使用認められる原則不可(一部の特定適格枠を除く)

実際の参入検討の際は、上表を参考に自社の目的に適合した市場選びが重要です。

1-3. J-クレジット・JCM・海外クレジットの位置づけと相互関係

国内のJ-クレジット、二国間クレジット(JCM)、海外ボランタリークレジットは、それぞれ制度的役割やGX-ETSでの適格性が異なる仕組みです。

まず、J-クレジットは、日本政府が認証する制度であり、高い信頼性を持っています。一方、JCM(二国間クレジット制度)は、途上国への技術・資金支援を通じて削減された温室効果ガスを日本とパートナー国で分け合い、国が決定する貢献度に応じた日本のNDC目標達成に直接算入できる制度です。

そして、2026年度から本格稼働するGX-ETS(排出量取引制度)第2フェーズにおいては、J-クレジットやJCMが適格クレジットとして認められており、企業が目標を達成する場合に欠かせないアセットとなっています。

参照URL: 環境省「J-クレジット制度及びカーボン・オフセットについて」 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/carbon_offset.html

OPEN HUB「カーボンクレジットとは?企業のメリット・デメリットと取り組み事例」 https://openhub.ntt.com/journal/7876.html

2. 東証市場の取引構造と市場システム

ここでは、東京証券取引所に開設された東証市場の仕組みや市場システム、参入要件について紹介します。

2-1. 東証市場が開設された背景と市場システムの概要

2023年10月に東京証券取引所へ開設されたカーボン・クレジット市場は、成長志向型カーボンプライシング構想に基づき取引の透明性を高める目的で設立されました。

従来の不透明な相対取引(OTC)から、国が認める中央清算型のクリーンな取引への転換を目指し、東証の既存株式取引インフラを応用した高度な市場システムが構築されています。

売買は平日の前場(9:00〜11:29)と後場(12:30〜14:59)に注文を受け付け 、1日2回(11:30、15:00)の板寄せ方式によって約定処理がおこなわれます。公示価格に基づく取引環境が整った結果、市場の流動性が大幅に向上しました。

2-2. 市場参加者の種別要件と参加申請手続きフロー

東証市場へ参入できる市場参加者は法人や自治体などに限定されており、個人の参加は認められていません。

参加登録にあたっては、健全な財務基盤やコンプライアンス体制 、インボイス制度(適格請求書発行事業者)への対応が求められます。

【東証市場への参加登録要件チェックリスト】

  • J-クレジット登録簿口座を開設しているか
  • 東証への「市場参加者」登録申請手続を完了しているか
  • 取引担保金・決済スキームを構築しているか
  • 社内の取引管理規程・リスク管理体制が整っているか
  • 売買業務を担当する社内受渡実務者の配置があるか
  • 購入後の無効化処理(償却)の手順を把握しているか
  • 最新の市場規則・制度改正動向をキャッチアップできているか

事前に上記のチェックリストを確認し、漏れなく手続きを進めましょう。

2-3. 東証市場で取引されるクレジット種別と売買ルール

東証市場では、省エネや再エネ等のJ-クレジットに加え 、2024年11月より超過削減枠(J-GBL)の取引も開始されました。

取引されるクレジット種別には、省エネルギー、再生可能エネルギー(電力・熱)、森林吸収などのJ-クレジット区分が含まれます。売買ルールについて、最小単位は1t-CO2 、呼値単位は1円 、制限値幅は基準値段の上下90%です。約定後の受渡となる決済は6営業日目(T+6)におこなわれ 、公平かつ安全な売買ルールが確立されています。

参照URL: 日本取引所グループ「カーボン・クレジット市場」 https://www.jpx.co.jp/equities/carbon-credit/

丸紅新電力「カーボンクレジットとは?仕組みや価格、企業のデメリットを徹底解説」 https://denki.marubeni.co.jp/column/carbon_credits/

3. 市場価格の推移と市場日報・レポートの活用法

ここからは、東証市場における市場価格の決定メカニズム、価格推移、および市場日報やレポートの読み方について見ていきましょう。

3-1. 東証市場における市場価格の推移と過去の取引動向

東証市場における約定価格は、開設以降の取引において省エネ由来が1,500〜2,000円/tから4,800円前後へ、再エネ由来が3,000〜4,500円/tから5,000円超へ上昇するなど、全体的に高値圏で推移している市況です。

森林吸収由来のクレジットは5,000〜15,000円/t程度の価格帯を形成しており、高いCSR需要を反映しています。気配値や出来高の変動傾向を見ると、企業の年度末や決算期、公的報告期に差し掛かるタイミングで需要が集中し、急騰による価格スパイクが発生しがちな傾向です。需要と供給のバランスや市場流動性の高まりが、適正な価格形成に直接的な影響を与えていると言えます。

3-2. 市場日報や公式レポートの入手方法とデータの読み方

東京証券取引所のウェブサイトで毎日公表される市場日報や公式レポートを活用して正確な市場動向の把握が可能です。

市場日報には、出来高、始値、高値、安値、終値、気配値などの取引指標が詳細に掲載されています。また、日本取引所グループ(JPX)や経済産業省が発行する定期レポートや各種統計データの分析を通しても、過去の約定価格トレンドや売買立会の動向を確認できます。一連のデータを自社の調達・売却戦略や投資シミュレーションに落とし込むことが、失敗を防ぐうえで有効なアプローチとなります。

3-3. 今後の市場価格見通しと売買タイミングの判断基準

2026年度からのGX-ETS(排出量取引制度)第2フェーズ本格化にともない、大企業を中心とする義務履行の需要が急拡大し、価格は引き続き堅調に推移すると見込まれます。

買い手企業が安値で調達するためには、需要期の直前に予測されるスパイクを避け、市場価格が落ち着く時期を見極めて段階的に調達するプロセスが重要です。一方、売り手となる創出者は、企業目標公表前などの需要が高まる時期に合わせた売却によって収益を最大化できるメリットが得られます。あわせて、変動幅による価格ボラティリティに対応するため、相対取引による事前予約と東証市場での取引を組み合わせたリスクヘッジ戦略の構築が必要です。

参照URL:日本取引所グループ「カーボン・クレジット市場」https://www.jpx.co.jp/equities/carbon-credit/

Carbon EX「【2026年最新】カーボンクレジット価格相場ガイド|Jクレジット・海外ボランタリー・排出枠価格を徹底比較」
https://carbonex.co.jp/blog/price/

4. 取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会と制度設計の最前線

ここでは、経済産業省や金融庁等による「取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会」の議論内容と、最新の制度設計について紹介します。

4-1. 取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会における主な議論

検討会では、カーボン・クレジット取引の流動性向上や金融機関の参入促進、適正な価格形成機能の確立に向けた金融インフラ整備が議論されています。

具体的な試みとして、住友商事、大和証券、丸紅、みずほ銀行の4社を流動性供給者であるマーケットメイカーに指定し、継続的な売買価格の提示によって市場の流動性を高める施策が試験導入されました。また、将来的な先物取引やデリバティブ市場の創設に向けた論点整理も進められています。海外炭素市場(EU-ETSなど)と同等の高度な金融取引インフラを構築することで、炭素市場としての信頼性を高める狙いです。

4-2. カーボン・クレジットの会計・税務処理とリスク管理の明確化

企業がクレジットを取り扱う際は、保有目的に応じた正確な会計区分と税務上の処理に加えて、リスク管理の徹底が必要です。

会計処理においては、転売目的で保有する場合は流動資産のうち「棚卸資産」、自社の排出量相殺や義務履行目的の場合は固定資産の「無形固定資産」または「投資その他の資産」として取得原価で計上します。

税務面では、J-クレジット等の有償譲渡は消費税法上の「資産の譲渡」に該当し、課税取引として仕入税額控除の対象となるため、インボイス(適格請求書)の対応が必須です。そのうえで、グリーンウォッシングに当たる、実質的な削減をともなわない不適切なオフセットとならないよう、第三者検証を通じた透明性の確保も徹底しましょう。

参照URL:CaboCre「J-クレジットの会計処理はどうする?実務のポイントと取引時の留意点を解説」
https://carbon-credit.co.jp/contents/accounting

丸紅新電力「カーボンクレジットとは?仕組みや価格、企業のデメリットを徹底解説」https://denki.marubeni.co.jp/column/carbon_credits/

5. 系統用蓄電池・再エネ事業でのカーボン・クレジット創出と収益最大化

ここからは、再生可能エネルギーや系統用蓄電池事業におけるカーボン・クレジット創出の可能性と、事業全体の収益性を向上させる組み込みスキームについて見ていきましょう。

5-1. 再エネ・系統用蓄電池プロジェクトによるクレジット創出と東証市場での売却

太陽光や風力などの再エネ発電に加え、系統用蓄電池の充放電運用により創出されたCO2削減量は、J-クレジットなどで認証されます。

現在、創出されたクレジットを東証市場や相対取引による売却で、環境価値を直接現金化できる環境整備が整いました。発電売電収入や卸電力市場(JEPX)、需給調整市場、容量市場での対価獲得にクレジット売却益を上乗せする多重収益(レベニュースタッキング)のモデル構築により、プロジェクト全体の事業性が大きく向上します 。

5-2. 系統用蓄電池事業の多重収益モデルと市場システム活用による参入戦略

系統用蓄電池事業は、複数市場を活用した多重収益構造を事業計画へ組み込むことで、高い投資利回りを実現できる有望な成長分野です。

ただし、事業化に際しては、変電所周辺の適切な土地選定や電力会社との複雑な系統接続協議、数億円規模の初期投資、市場価格に連動させた高度なAI自動充放電制御など、高度な専門的課題が存在します。

自社のアセットで参入できるかの確認や、権利付きの販売中案件の選定、精緻な収益シミュレーションを実施する第一歩として、系統用蓄電池総合プラットフォーム「GRID NAVI」などの専門サポートを活用し、プロの知見を得ながら検討を進めると効率的かつ確実です。

参照URL:丸紅新電力「カーボンクレジットとは?仕組みや価格、企業のデメリットを徹底解説」
https://denki.marubeni.co.jp/column/carbon_credits/

「GRID NAVI」
https://gridnavi.jp/

6. まとめ:カーボン・クレジット市場の動向を捉えて脱炭素と事業成長を実現する鍵

ここまで、カーボン・クレジットの概要、東証市場のシステム、市場価格や日報・レポートの活用法、金融インフラ整備の動向についてさまざまな角度から紹介しました。

カーボン・クレジット市場は、企業の脱炭素目標達成を支える基盤であり、環境取り組みや再エネアセットを直接的な事業収益へ変える重要な機会を提供しています。

近年では、単なるクレジット売買にとどまらず、電力市場取引とクレジット創出を組み合わせた系統用蓄電池事業による多重収益化が注目を集めています。系統用蓄電池の業界全体も、今やマルチ市場戦略によるレベニュースタッキングがスタンダードです。

「自社条件での参入可能性の確認したい」「土地選定・系統接続・収益シミュレーション、販売中案件の確認から導入相談を始めたい」ときは、ぜひ第一歩として、系統用蓄電池総合プラットフォーム「GRID NAVI( https://gridnavi.jp/ )」の活用をおすすめします。

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